森林の機能は、森林が持つ”能力”のことです。
この能力によって、さまざまな物質を生産し、環境を改善しています。
健康な森林はこれらの能力に優れていますが、反対に弱っている森林はこれらの機能が低下しています。
主に森林には、以下の7つの機能が備わっています。
1. 物質生産 —————– (生活資源の供給)
2. 水源涵養 —————– (水を貯める)
3. 土砂災害防止 ———– (土砂崩れを防ぐ)
4. 快適環境保全 ———– (大気の浄化)
5. 地球環境保全 ———– (地球温暖化を抑制)
6. 生物多様性保全 ——– (生態系を守る)
7. 保健・文化 ————– (心身のリフレッシュ)
たとえば、”物質生産”は建築材や燃料、食料を生産する機能のことです。
また、この恩恵を受けるのは森林所有者となります。
しかしながら、このほかの機能 (上記2〜7)は、水を貯め、土砂を防ぎ、大気を浄化し、豊かな生態系、美しい景観を作り出すものです。
そのため、森林を所有していない人にも、これらの恩恵が与えられます。
このような機能を「公益的機能」と呼びます。
日本は、およそ2500万ヘクタール(森林率70%)を森林が占めており、この森林の機能を金額に換算すると年間で70兆円に相当するとされています。(林野庁)
また、林業が「公益的産業」と呼ばれるのもこのためです。
本記事では放置された森林がもたらす影響について紹介していきます。
林業従事者の減少によって起こる問題とは!?
日本は、世界有数の森林国です。(以下の記事参照)
しかしながら、林業に従事する人の割合はここ数十年で急激に”減少しています。
以下のグラフでは、およそ30年間で10万人もの人が林業から離れたことを表しています。
その一方で、国土を覆う森林は年を追うごとに”増加しています。
直近の5年間を見ると、年間7000万㎥もの森林が増加していることがわかります。
これは東京ドームに当てはめると、約56個分です。
このように森林が増え続けることは、環境面を考えれると良いことではないのかと思われるかもしれません。
しかしながら、放置され、伸びきった樹木が増える続けるとなると、同時にさまざまな問題も起こり得ます。
放置されると森林サイクルが停止する!?
森林は、資源の循環をうながし、調整するフィルターのような存在です。
森林に木がなければ、川を流れる水にも変化が起こり、最終的にはさまざまな生態系に大きなダメージを与えます。
しかしながら反対に、放置され、茂り過ぎた森林が増えることで、地表には太陽が届かない現象が起こります。
これにより、光合成が起こり、腐葉土が作られるといった森林サイクルが形成されず、土地が痩せてくのです。
そして最終的には、地盤が緩くなり、崖崩れや土砂災害といった原因にもなりかねません。
光合成効率の低下による地球温暖化への影響
樹木は光合成により空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。
しかしながら、樹齢とともに光合成の効率は低下していくため、11〜40年までの青年期がもっとも効率がよいとされています。
そのため、成長が終了した樹木は、ほとんど光合成は行わずに呼吸活動は続くため、二酸化炭素吸収効率は低下し、逆に二酸化炭素の排出量が多くなるのです。
また現在、パリ協定により約2,780万トンを森林吸収量で確保することが明記されました。
これを森林面積に換算すると、愛知県の面積に相当する”年平均52万haの間伐の実施が必要となります。
そのため、林業従事者の減少問題に取り組み、これら森林サイクルとのバランスを考えていかなければならないのです。
最後に -森林がもたらす恩恵-
本記事では、日本の森林や林業が抱える問題点について紹介しました。
このように森林量の増加は良いことですが、それと同時に管理する林業従事者が減少し、放置されバランスの取れなくなった森林が引き起こす問題を無視することはできません。
森林にはさまざまな機能があり、私たちは気付かぬうちにその恩恵を受けています。
次回以降は、これら森林がもたらすそれぞれの役割についてご紹介していきます。
以上が「森林の”7つ”の役割とは!? -放置された森林がもたらす影響-」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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またこの記事を読んで、少しでも森林や林業について関心を持って頂けますと幸いです。