クスノキは漢字で「楠」や「樟」とも書く、長寿で大きな木です。
葉の寿命はほぼ1年。若葉が出ると同時に、古い葉っぱが一斉に紅葉し、落葉する珍しい木です。
常に新しい葉なので、色も明るく爽やかな印象があります。
紅葉ライトアップで有名な京都府立植物園では、ライトアップされた樹齢100年以上のクスノキ並木が約200m以上に渡り続いています。
京都府立植物園では、その迫力あるクスノキ並木と、紅葉ライトアップによる幻想的な空間を楽しむことができます。機会がありましたら、ぜひ一度、ご覧になってみてください。
クスノキの紅葉は年に2回ある!?
クスノキの紅葉は春と秋の年2回あることはご存知でしょうか。
クスノキは常緑樹なので、クスノキ全体が紅葉するわけではないのですが、他の木と同様、秋には役目を終えた葉を落葉し、その過程で葉が紅葉します。
葉が紅葉する悲しいエピソードについては ”紅葉はなぜ赤色なのか?もみじ狩りの由来と魅力を解説!“で詳しく紹介しております。
しかし、クスノキの場合は春にも紅葉します。
これは、光合成の能力の高い一年目の葉を有効に更新するためであると言われています。
春に紅葉し、落葉するのはある意味、夏の成長への準備とも言えます。
このシステムによりクスノキは、日本の巨樹ランキングトップ10のうちの上位8本となり得ています。(自然環境保全基礎調査)
巨樹ランキング1位の鹿児島・始良群「藩生の大楠」は推定樹齢1500年、幹周が24mと言われています。(天然記念物に指定)
またその大きさから、日本最古の歴史書である「古事記」では「朝日が当たれば淡路島に影を落とし、夕日が当たれば大阪に影を落とす」クスノキがあったとされている程です。
詳しくは ”世界で一番高い木とは!?木が成長できる限界と「水」との関係を考察!” で解説しております。
ナンジャモンジャと呼ばれたクスノキ
クスノキは南方系の樹木で、暖かい気候を好みます。実生は、鹿児島以南、台湾、中国南部、ベトナム方面とされています。
そのため、霧が降りる、雪が積もるような寒い地域では、実生一年で枯れてしまうと言われています。
しかし最近は、ヒートアイランド現象や温暖化で、東京都心でもクスノキの実生が見られます。
そのため、関東では当初、クスノキは珍しい木だったため、千葉県では名前が分からない木につける「ナンジャモンジャ」という表記が付けられていたと言われています。
飛鳥時代から始まるクスノキの歴史と魅力!
クスノキは古くから、香料や防虫剤として用いられてきました。
そのため、飛鳥時代の木彫仏は、材に香りがあり、広葉樹の中でも彫りやすいクスノキが用いられていました。
また、クスノキの「木魚」は音がまろやかで最上の素材と言われています。
材や葉には共に1%の精油を含み、そのチップを水蒸気で抽出蒸留すると樟脳油が得られます。(今はほとんど化学合成によって作られているらしいです)
樟脳は、樹木が作る「優秀な防虫剤」として知られています。
九州では、抽出を終えたクスノキのチップを、次の水蒸気蒸留の燃料にし、チップが燃えた灰は、鹿児島のお菓子「灰汁巻(あくまき)」に利用するそうです。
クスノキが余すことなく有効利用されています。
余談ですが、天然樟脳の白い結晶よりも、アロマテラピーで使用する樟脳油の方が高く売れるそうです。
さらに調べると、クスノキは英語で「Camphor Tree」といい、「カンフル剤を打つ」という言葉は、この樟脳のことだったのです。
現在では、血行促進剤や鎮痛剤として使われています。
これらのことから、クスノキは「薬の木」が語源であるとされています。
またクスノキは、このように木に油を含んでいるため、耐水性があります。
「日本書紀」に「杉およびクスノキは、もつて浮宝(船)とすべし」というスサノオノミコトの逸話が残っています。
古くから和船の材料として用いられており、また広島厳島神社の海中に立つ鳥居もクスノキでできています。
数千年生きると言われるクスノキも、意外と私たちの身近に存在していたのですね。
以上が「紅葉ライトアップ!京都府立植物園・クスノキ並木を紹介!年2回紅葉するクスノキの魅力と歴史を解説!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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