トチノキは、日本全域の山地の谷間に自生する大きな葉の落葉樹で、直径は2m、樹高は30mを超す大木です。
手のひら状の大きな葉は長さ50cmほどあり、黄色に染まる紅葉は迫力があります。
黄葉はやがて橙色や黄褐色になり、最後には大きな葉ごと落葉します。
山地の谷間のような、適度に湿気のある肥沃な土壌で育つトチノキですが、街路樹や公園樹としても人気があり、街中でも数多く植えられています。
紅葉する理由については ”紅葉はなぜ赤色なのか?もみじ狩りの由来と魅力を解説!” で詳しく紹介しております。
トチノキと銀座マロニエ通りとの関係
また、近縁種のセイヨウトチノキも有名です。別名「マロニエ」と呼ばれています。
西洋産のトチノキで、主にヨーロッパ・バチカン半島に自生しています。
マロニエの葉はギザギザしてるのが特徴で、樹形はトチノキと比べ、まとまりが良く、非常にスタイリッシュです。
マロニエはフランス・パリの街路樹としても有名です。
最近では「銀座マロニエ通り」でも植栽されており、ヨーロッパ風の街並みの演出に一役買っています。
ドングリに負けていない!トチノキの魅力と歴史
葉は大小5〜7枚の葉が一本の柄について、一枚の葉を形成しています。
5月〜6月になると、小さな花が集まりキャンドルのような縦長の白い花が咲きます。
花には良質の蜜があり、ミツバチが好んで蜜を吸いに訪れます。
果実は丸く、熟せば3つに割れ、「栃の実」と呼ばれるクリより一回り大きな種子が特徴的です。
種子はデンプンやタンパク質を多く含み、かつてはドングリと共に食料となっていました。
コナラやミズナラのドングリよりも渋みが強いので、しっかりアク抜きをしてお餅に混ぜ「栃餅」として食べるのが有名です。
コナラやミズナラについては「ドングリの木・コナラの紅葉と魅力を紹介!薪や炭の材として生活に欠かせなかった雑木林を代表する木」で詳しく解説しています。
この渋みは非水溶性の「サポニン」と「アロイン」と呼ばれる成分で、栃の実を食すには非常に手間がかかるそうです。
1週間ほど水に浸け、2週間ほどの天日干し後、木灰と熱湯でしばらく煮る事で、「渋み」がアルカリ中和されるそうです。
また、栃の実は保存食として非常に有用で、一度天日干しすると10年はもつため、縄文時代より重宝されていました。
縄文時代の赤山遺跡(埼玉県)から、土器や臼代わりに利用された石、木製の水槽が出土しており、栃の実の加工工場があったとされています。(材料技術史概論 第3版)
トチノキは「面食らう」の語源
その他にも、アク抜きした栃の実は、「栃麺」の材料としても有名です。
栃麺は、実をすり潰した粉をそば粉や小麦粉と混ぜて作られるそうです。
また、この栃麺から「面食らう」という言葉が生まれたとされています。
栃麺は固まるのが早く、急いで伸ばす必要がありました。
この様子を「栃麺棒をふるう」と呼び、自身が急ぐ状況に立たされると「栃麺棒を食らう」となります。
そして「栃麺棒を食らう」が略され、「面食らう」という言葉が使われるようになったそうです。
このように、古くから人々の生活に根付いてきたトチノキは、絵本「モチモチの木」の題材としても取り上げられています。
その他にも、栃木県の「県の木」にも選出されていることで有名です。
高価なトチノキ材の魅力
木材は黄金がかった黄色で、非常に光沢があります。
木目はきめ細やかで、比重は0.52(水の比重は1.0)と非常に軽いです。
また、軽くて柔らかい材質から、切削などの加工が非常に容易です。
そのため、トチノキ材は建築材や家具材、楽器(バイオリン)と用途は広いです。
トチノキはねじれたり、曲がったりしながら成長するため、「縮み杢」が木材に出ます。
国産材が少なくなった現在、この杢が入ったものは非常に価値があり、高値で取引されています。
以上が「ドングリに負けていない!トチノキの魅力と歴史を紹介!栃餅や栃麺の活用法と銀座マロニエ通りとの関係」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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