花椒(かしょう)・山椒(さんしょう)・花山椒(はなざんしょう)は、もちろん皆さんご存知かと思いますが、違いがよく分からないという方もおられると思います。
そのため本記事では、花椒・山椒・花山椒との違いや、サンショウ(山椒)の”種類”と”香り”の魅力について、まとめて紹介しております。
本記事を読めば、サンショウ(山椒)の種類や香りの魅力について一通り分かります。
少し長いですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。
花椒・山椒・花山椒との違いとは!?
まず始めに、花椒(かしょう)・山椒(さんしょう)・花山椒(はなざんしょう)の違いを、以下にまとめます。
花椒
・カホクザンショウ(華北山椒)から作られる。
・果皮のみを使用。
・熟した実を乾燥させる。
山椒
・日本原産のサンショウから作られる。
・実や若葉、花、木の芽、幹の皮などの様々な部分が、”薬味”や”飾り”として使用。
・熟す前の果皮を粉末にしたもの。
花山椒
・日本産の山椒の花を漬けたもの。
・”料理の飾り”や”佃煮”などに使用。
花山椒が収穫される動画(YouTube)がありましたので、ご興味がある方はぜひどうぞ。
”山椒(さんしょう)”とは!?
サンショウ(山椒)は、日本を代表するハーブの木であり、爽やかな香りの”葉”や”実”が有名です。
サンショウは、ミカン科サンショウ属の落葉広葉樹です。
また日本原産で、北海道から沖縄まで全国に分布しています。
このサンショウの葉や実を使った料理としては、”タケノコの木の芽和え” や ”うなぎの蒲焼き” などが挙げられ、柑橘系の風味を活かした和食は実に多いです。
また日本では、古くから使われてきた香辛料で、縄文時代には既に料理に利用されていました。
「魏志倭人伝」にも登場するほど、このようにサンショウは古くから日本人に親しまれています。
※葉の香りが料理に用いられる”ホオノキ”については以下の記事で紹介しています。
※また、古くから日本人に親しまれてきた樹木として”サクラ”や”梅”が挙げられます。”サクラ”や”梅”の歴史については以下の記事で紹介しております。
サンショウの名前の由来を紹介!
サンショウの「椒」には”小さくて辛い実”という意味があります。「山にある小さく辛い実」という意味で「山椒」と名付けられました。
また別名「椒(ハジカミ)」と呼ばれ、これも同じく”辛いもの”に対して使われる「椒」から名付けられています。
英語では「Japanese pepper」と呼ばれています。学名の「Zanthoxylum piperitum」は「コショウのような」という意味で、サンショウの実が”辛い”ことから名付けられています。
雄の木と雌の木の違いとは!?
サンショウは雌雄異株で、オスの木とメスの木があります。(以下の記事参照)
サンショウの実をつけるのは”メスの木”だけです。
”オスの木”の葉は香りが高く、若葉を茶碗蒸しや煮物の上に香り付けとして添えられていることが多いです。
また柑橘系の強い香りがする葉は、アゲハ蝶の幼虫が好んで食しています。
雄花は「花山椒」として食用にされ、雌花は”若い実”や”完熟した実”が利用されています。
サンショウのトゲがなくなる!?
サンショウの木は、乾燥や夏季の日差しに弱く、半日陰の湿潤な土地を好みます。
そのため、サンショウの木は栽培が難しいことで有名です。
樹高は3mほどで、枝には鋭いトゲが2本ずつ対に生えているのが特徴です。
若木の時はトゲが目立ちますが、成長するにつれてトゲがなくなり、でこぼこした”こぶ”が目立ちます。
トゲのないサンショウとしては、兵庫・養父市の「朝倉山椒」が有名です。
また、サンショウと似ているイヌザンショウの実は香りが劣ると言われ、日本では利用されていませんが、”葉”はレモンのような良い香りがします。
香りの他にも、イヌザンショウとはトゲが交互に出ていることから見分けがつきます。
※同様に”ニセアカシア”という樹木にも「トゲナシニセアカシア」という品種が存在します。(以下の記事参照)
サンショウの木材としての価値を紹介!
でこぼこした樹皮とは対照的に、木材の黄色味がかったクリーム色の肌目は緻密で、すべすべした滑らかな肌触りです。
幹は硬く、解毒作用があるとされており”すりこぎ棒”に加工されます。
また、あれほど香り高い実を持つサンショウですが、木材には意外と香りはないです。
※対して香り高い木材”ヒノキ”の香りの秘密と特性については以下の記事で紹介しております。
なぜ実の色が派手なのか!?
サンショウは、若葉に続いてクリーム色の花を咲かせます。
そして秋になると、緑色の果実が熟成され赤い実をつけます。
果皮が赤く熟すと、自然に二つに裂け、黒いツヤツヤした種子が出てきます。
この派手な”赤”と”黒”の色のコーデで、鳥に種子を運んでもらうためにアピールをしています。(以下の記事参照)
なぜ食べると ”ピリっと辛い” のか!?
サンショウの実は食べると「ピリっと辛い」と表現されます。
「サンショウグイ」という鳥は、鳴き声が「ヒリリー」と聞こえたことから山椒を食べたと連想し、この名前が付いたとされています。
サンショウグイという名前ですが、山椒の実や葉は食べません。
この「ピリっと辛い」と感じるのは、「サンショオール」という成分が含まれているためです。
サンショオールは、麻痺効果のある毒性成分で、食べ過ぎには注意が必要です。
舌の痺れを引き起こす辛味成分であり、大脳を刺激し、内臓器官の働きを活発にさせ、消化促進を促すとされています。
また、サンショウは健胃薬や腹痛治療の処方用薬や製剤原料として認可されています。
食用としては花も実も使われますが、生薬としては果皮の部分のみ使用されます。
日本薬局方においては、サンショウのみが生薬として認められており、花椒やその他のサンショウ属植物は厳密に除外されています。(引用:伝統医薬データベース)
中国薬局では規定が異なっているそうです。(詳細については後述しております)
また昔は、山椒を川の中に入れて毒成分を流し、魚を痺れさせて漁をする「毒もみ」という漁法に使われていました。
最近では、毒もみが環境問題の原因になることから、農林水産省の許可がないと利用できなくなっています。
※反対にこの毒によって生き残りを図っている”ナンキンハゼ”を以下の記事で紹介しています。
”花椒(かしょう)”の魅力を紹介!
花椒は中国語で「ホアジャオ」と呼びます。カホクザンショウ(華北山椒)の熟した赤い実を乾燥させ、その果皮を使用します。
花椒は「四川山椒」や「中国山椒」とも呼ばれます。
食べた際、舌が痺れる「ピリッとパンチのある辛み」で四川料理には欠かせない調味料です。
本格的な麻婆豆腐には必ずと言って良いほど入っており、辛いを表す「麻」は花椒を指しています。
花椒は中国漢方の生薬として、古くよりその殺菌、鎮痛、麻酔効果が利用されてきました。
香辛料としては果皮の部分だけが使われますが、漢方では中の実の部分も使用されます。
また、中国漢方においては、”花椒”や”山椒”といった種類による区別はせず、同じサンショウ属の植物すべてを利用しています。
”山椒(さんしょう)”の魅力を紹介!
サンショウは薬味や飾りとして、余すことなくすべて用いられています。
七味唐辛子に用いられ、唐辛子、麻の実、黒ごま、けしの実、青海苔、生姜と相性が良いです。
花椒と比較すると辛みはあるがマイルドで、より柑橘系の爽やかな香りが特徴です。
[まとめ] 日本のサンショウ系統品種を紹介!
サンショウの実の収穫量は和歌山県が国内生産量の約80%を占めているとされています (引用:和歌山県公式HP)。
和歌山県の有田川町、紀美野町の特産品として栽培されている「ぶどう山椒」は果実が大型で、ぶどうの房のように数多く実ることが名前の由来です。
以下に、日本のサンショウ系統品種をまとめました。
気になるサンショウがありましたら、品種名をクリックしてみて下さい。各品種の紹介ページへ移動します。
[まとめ] 世界のサンショウ同属異種を紹介!
サンショウの同属異種のサンショウ属は、世界の熱帯・亜熱帯および温帯地方に広く分布しており、約250種が知られています。
代表的なサンショウを以下に紹介しています。
気になるサンショウがありましたら、品種をクリックしてみてください。”Wikipedia”などの紹介ページへ移動します。
最後に -サンショウの花言葉-
サンショウの花言葉は「健康」と「魅惑」です。
「健康」は、お正月に飲む「お屠蘇(おとそ)」に、山椒が使われることに由来します。
お屠蘇は、一年の邪気を払い、無病長寿を願って飲まれ、胃腸の機能を高め、消化不良や腹痛、血液浄化、風邪、咳などに対して薬効があります。
「魅惑」は、食欲のないときでも、山椒の花や実の爽やかな香りに食欲がそそられることに由来しています。
サンショウは毒素があるので食べ過ぎは注意ですが、食欲がそそる香りに釣られて、ついつい食べ過ぎてしまいます。
以上が、”[まとめ] 山椒と花椒と花山椒の香りと違いとは!?サンショウの種類と香りの魅力を一挙紹介!” の説明になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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