イイギリは、樹高15m直径60cmにもなる、大きな落葉樹です。

 になると明るい黄色に紅葉し、その紅葉の間に赤い数多くの実を「ぶどう房状」に垂れ下げるので、秋晴れの青空とのコントラストはとても美しいです

 そしてやがて葉が散ると、たくさんの赤い実だけが残って、今度は赤一色になります。

 また、この実は年明けまで残るので、長い間楽しめる樹木として有名です。葉が散った後も枝に残るので、冬山の中では一目を引きます

イイギリの名前の由来 -キリ(桐)との関係-

 大きなハート型赤みがかかった長い葉柄が特徴のイイギリの葉は、長さ約40cmもあります。

 また、葉の形はキリ(桐)の葉と似ています

 昔は、この大きな葉を食器代わりにご飯を包んでいたそうです。

 さらに、イイギリはその灰白色の樹皮や、キリの代替品として下駄などにも利用されるなど、キリとの共通点がありました。

 これらのことから、「飯桐(いいぎり)」という名前になったとされています。

 しかし、イイギリはヤナギ科(旧イイギリ科)であり、キリ科とは仲間の樹木ではありません

 別の種類で、ここまで似ているのは珍しいですね。

 ヤナギについては「ヤナギ(柳)の特徴と魅力まとめ!日本の四季の移り変わりを知るせるヤナギを一覧紹介!」で紹介しています。

 ”イイギリ”は昔は「イイギリ科」に分類されていました。しかし、近年の研究でイイギリ科に属する樹木の一部は、「ヤナギ科」の樹木の仲間であることがわかったそうです。また、この研究の結果で多くの樹木がヤナギ科の仲間であるとされました。”イイギリ”もその樹木のうちの一つだそうです。

 もともと自然界には区別はないと思いますが、これも私たちが自然を理解するために必要なことなのでしょう。

 以前「竹は草か木かどっち!?知っておきたい竹の特徴と魅力を紹介!」の記事で、について紹介しています。

 竹が「草か木か」という分類は難しく植物を区別して認識する上で、まさに議論の焦点となっています。ご興味のある方は是非どうぞ。

花の香りが良い雄の木・美しい赤い実をつける雌の木

 イイギリは雄の木雌の木がある”雌雄異株”です。

 植物の性別については「植物に「性別」はあるのか!?そのメリットを解説!」で説明しております。

 イイギリは雌の木が、美しい赤い果実を実らせます

 また、大木のイイギリは果実が実りません。これは雄の木であるためです。

 木の姿だけでは、見分けることは難しく、”雄の木か雌の木なのか”は実や花がつくまではわかりません。

 花で見分ける方法は、に雄の木は雄しべだけの花が咲き、雌の木は雌しべだけがついた花が咲きます。

 また、雄の木の花は非常に香りが良いです。

 イイギリ並木を見つけた際は、匂いを確認してみるのもいいかもしれませんね。

 しかし、葉の色と同じ緑色の花なので、注意しないと気付かないかもしれません、、、。

イイギリの実は食べられるらしい

 イイギリは、枝にたくさんの真っ赤な美しい実をつけます

 このことから、赤い実がついた枝は、大形の生け花装飾に使われています。

 学名は「Idesia polycarpa」といい、種名の「polycarpa」は「果実の多い」を意味しています。

 イイギリの他にも、エノキは数多くの実を付けることで有名です。

 エノキについては「エノキ(榎)の紅葉の魅力と歴史を紹介!なぜ漢字に”夏”の季語が使われているのか?」で紹介しています。

 そのため、イイギリの実もエノキの実も鳥が好んで食べています

 実は、真っ赤に熟したイイギリの実は、毒がなく食べることができます

 しかし、実の中には小さな種があり、食べづらく、苦く甘みはないそうです。オススメはしません

ナンテン(南天)の実との違いとは!?

 イイギリの赤い果実は、非常にナンテン(南天)の実に似ています。

 このことから、イイギリは別名「ナンテンギリ(南天桐)」と呼ばれています。

 イイギリの果実は毒がなく食べることができますが、ナンテンの実には毒があります

 また、”イイギリ”と”ナンテン”には、白い実をつける品種が存在し、白い実をつけるナンテンは「白南天」と呼ばれています。(白い実をつけるイイギリは「シロミイイギリ 」と呼ばれているそうです)

 しかし、現在でも市販されている「白南天箸」には、イイギリが使われているようです。

イイギリの花言葉 –恵まれた人

 イイギリの花言葉は「恵まれた人・豊穣・恵まれた恋」だそうです。

 数多くの美しい真っ赤な果実をつけるイイギリにはぴったりの花言葉ですね。

 ちなみにナンテン(南天)も、「難(ナン)を転(テン)じて福となす」という語呂が当てられたことから、縁起の良い樹木として知られています。

 またナンテンの実は、咳を抑える効果があり、現在も”のど飴”の原料にも使われているそうです。

 さらに樹皮は”胃腸病”や”眼病”に効くとされており「薬の木」としても知られています。

 「カンフル剤を打つ」で知られる”薬の木”クスノキについては「京都府立植物園で紅葉ライトアップされるクスノキ並木を紹介!年2回紅葉するクスノキの魅力と歴史を解説!」で紹介しています。

最後に -鳥に大人気のイイギリの実-

 イイギリの赤く熟した実は、鳥に非常に人気があります。

 この実は、しばらくは食べられずに残っていますが、ある日突然なくなってしまいます

 私たちには、同じように見えるイイギリの実ですが、鳥は最もおいしい時期を見極めて食べているのかもしれませんね。

 以上が「美しい赤い実をつけるイイギリの魅力を紹介!ナンテン(南天)との共通点と違いとは!?」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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