ムラサキシキブ(紫式部)は、樹高3m程の木で日本各地の低山に、数多く実生しています。
林道の林縁にも見られるので、目にする機会も非常に多いです。
ムラサキシキブは一見すると、ただのヤブ木ですが、秋に淡い黄色の紅葉と、美しい紫色の実が熟し、一変します。
実は小粒ながらも、その明るい紫色は鮮烈です。
黄色の紅葉と、紫色の実の控えめながらも鮮やかな色のコントラストは、名前の由来の通り奥ゆかしさを感じます。
また、ムラサキシキブは落葉樹であり、葉が散った後も実は残ります。
冬山に実だけが残った木は、晩秋の名残惜しさを感じさせます。
ムラサキシキブの名所としては、京都・嵯峨野の正覚寺が有名です。
落葉樹と常緑樹については「松竹梅はなぜ ”縁起良く” ”めでたい” 樹木とされているのか!?」で紹介しています。
ムラサキシキブの名前の由来とは!?
名前の通り紫の実をつけることから、紫式部を連想して「ムラサキシキブ」と名付けたそうですが、少しだけ違うようです。
「玉ムラサキ、京にては紫シキミ」
(大和本草, 1709年)
このように、京都では重なりあった紫色の実を紫重実(ムラサキシキミ)と呼び、これが作家の紫式部を連想させたことが名前の由来であるそうです。
ともあれ、非常に覚えやすい名前です。
秋に赤や黄色に熟す実は非常に多いですが、紫色となるとまず種類は少ないです。
また紫式部を連想させる名前の良さも手伝い、観賞用の樹木として人気が高いです。
しかし、ほとんどがコムラサキと混同されていることが多いです。
似ている樹木一覧 -どれも同じでややこしい-
ムラサキシキブと葉や実が非常に似ている樹木を紹介します。
しかし一見すると、どれも同じでややこしいです。
なので参考程度に。興味がある方はぜひどうぞ。
「コムラサキ」
樹高1.5m程で ”ムラサキシキブ” と比べると小型であるが、実の数が非常に多く、広く庭木などで植栽される。
「オオムラサキシキブ」
長さ20cmにもなる葉は ”ムラサキシキブ” よりも厚くて大きい。また花や実も一回り大きいことが名前の由来。暖かい気候を好む。
「ヤブムラサキ」
”ムラサキシキブ”と比べ、大きな葉や花に細かな毛が多いのが特徴。”ふわっ”としたビロードのような手触り。日本各地で見られる。
最後に -紫式部日記-
「源氏物語」の作者「紫式部」は、藤原道長の要請で宮中に上がった際、その宮中の様子を書いた「紫式部日記」を執筆しています。
この日記には、他の宮仕えのライバルに対する辛辣な批評が数多くあることで有名です。
その中で『枕草子』の作者「清少納言」に対する手紙が有名です。
「清少納言こそ したり顔にいみじうはべりける人 さばかりさかしだち 真名書き散らしてはべるほども よく見れば まだいと足らぬこと多かり」
引用:『紫式部日記』
得意げに真名(漢字)を書き散らしているが、よく見ると間違いも多いし大した事はない。
以上が「ムラサキシキブ(紫式部)の木とは!?名前の由来と紫色の実の魅力を紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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