柿は秋晴れの青空に映え、日本の秋を彩る風物詩です。
そのため、柿の木の紅葉をご存知ない方も多いのではないでしょうか。
葉は一枚ずつ紅葉し散っていくため、目立たないのかもしれません。
しかし、その1枚は赤や黄、茶色や緑が入り混じっており、鮮やかでありながら渋さがあり、非常に味わい深い紅葉です。
紅葉にある緑の斑点も、他の紅葉にはない独特な雰囲気を感じさせます。(病気や虫食いによるもの)
落葉後も柿の実はしばらくは残り、冬山の雪化粧した柿には風情があります。
本記事では、秋の味覚”柿”の魅力と柿の豆知識をまとめて紹介します。
万葉集の歌人・柿本人麻呂との関係とは!?
その紅熟した実から「赤き実のなる木」が語源となり「柿の木」と呼ばれるようになりました。
万葉集の歌人、柿本人麻呂(660年-724年)の性にも含まれる”柿”は、奈良時代(710年-794年)以前より中国から渡来したとされています。
当時の柿の木はまだ珍しく、家に柿の木が植えられていたということで、”柿本”という性がついたそうです。
柿が赤くなると、 医者が青くなる
秋の味覚を代表する柿には甘柿と渋柿があり、甘柿は日本で誕生しました。
渋柿は干し柿にすると、甘柿よりも甘くなります。
”根”は強心剤として韓国では薬局で売られているようです。
同じく、クスノキから採れる樟脳は強心剤に用いられています。詳しくは「京都府立植物園で紅葉ライトアップされるクスノキ並木を紹介!年2回紅葉するクスノキの魅力と歴史を解説!」で紹介しております。
”葉”には殺菌効果があり、葉で握り寿司を包んだ「柿の葉寿司」は奈良や和歌山の名産物として知られ、葉はそのまま食べることができます。(一般的には柿の葉は取って食べる)
また、葉に含まれているビタミンCはレモンの数十倍以上と言われています。
その葉から作られる「柿葉茶」はビタミン類とミネラル豊富で、健康に良いです。
近年では、花粉症の予防に効果があるとされ、葉の成分を使ったサプリメントも商品化されています。
花粉症の原因とされる杉については「花粉のイメージ!? 日本にスギが多い歴史と対策」で紹介しています。
柿が赤くなると、 医者が青くなる。
このように、栄養源が不足していた時代では、医者の診療が必要ない万能薬として重宝されていました。
桃栗三年、柿八年
「桃栗三年、柿八年」という有名な諺があります。
これは柿のタネをまいてから実ができるまでの期間を表しており、非常に長いです。
このことから「何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかる」という意味で使われています。
最近では、接ぎ木の技術が発達し、4年程で実ができると言われています。
秋の味覚”柿”の種類を紹介!
柿は”タネのあるなし”、”甘い渋い”で呼び名が変わります。
「タンニン」という成分が渋みの原因であり、本来すべての柿は”渋いもの”だったそうです。
タンニンについては「秋の味覚 ”クリ”の紅葉の魅力と歴史を紹介!」「ドングリの木・コナラの紅葉と魅力を紹介!薪や炭の材として生活に欠かせなかった雑木林を代表する木」で紹介しています。
干し柿には渋柿が使われている
干し柿には渋柿が使われています。
渋柿の甘みは”タンニン”によってかき消されていますが、実は渋柿の方が甘みとなる糖分を多く含んでいるそうです。
タンニンは水溶性です。干し柿を作る際、渋柿にアルコールを噴霧し、天日乾燥することでタンニンは固まり不溶性となるそうです。
不溶性となったタンニンは渋みを感じないため、甘い糖分だけを感じる干し柿ができています。
最近では「遠赤外線乾燥」により、柿色がそのままに仕上がった干し柿も出回っています。
柿材としての価値と魅力とは!?
柿材の木質は緻密で硬く、ゴルフクラブのヘッドにも使われており、特にアメリカガキを使った物は「パーシモン」と呼ばれていました。
柿材は非常に硬いですが、粘りがなく折れやすいです。
柿材で「クロガキ」と呼ばれ、色の縞や柄が生じ、黒い縞模様が入った木材は非常に珍しいです。
模様に味わいがあり、普通の柿材と比べさらに硬い銘木ですが、産出量が極めて少ないです。
クロガキは茶室の床柱、茶道具などに使われています。
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」(正岡子規)
法隆寺に立ち寄った後、茶店で一服して柿を食べると、途端に法隆寺の鐘が鳴り、その響きに秋を感じた。
1895年10月26日『海南新聞』
正岡子規の最も有名な俳句であり、松尾芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」と並んで俳句の代名詞として知られています。
法隆寺については「法隆寺の柱は生きている!?日本人と木の深い関係」で紹介しています。
また、この俳句が出版された10月26日は「柿の日」となっています。
最後に -人と動物の共生とは-
柿は鳥獣にも大人気です。
そのため祖父はよく、実った柿をすべて取らずに残していました。
写真は2022年12月5日のInstagramで投稿した写真です。
晩秋の朝焼けです。今まさに熟し柿で、最後の食べ時期になっています。柿の実の数も減ってきて、鳥が朝から実をつついています。あと1週間もすれば、この景色も無くなりそうです。
https://www.instagram.com/p/Clw09BHhiNe/
田舎ではよく見られる光景ですが、最近では野生動物の餌になっているという指摘があります。
鹿の数が増加し山の食料が少なくなった現在、猿や熊がこの美味しい実を目当てに山里へ降りてきます。
鹿については「ナンキンハゼの紅葉名所は日本で奈良公園だけ?そこには鹿との複雑な関係性があった」で紹介しています。
人と動物の共生を考える上でバランスは非常に重要です。
すでに人間の手が加えられたこの世界では、昔とは違う新たな自然との付き合い方が求められています。
以上が「秋の味覚”柿”の魅力とは!?干し柿用いられる渋柿の豆知識を紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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