「自分の山の場所が分からない」

「隣との境界が分からない」

 こうした問題に悩まされている森林所有者の方が増えています。

 この問題は、法律や所有者の事情があり非常に難しいです。

 しかし、森林整備の実施や補助金制度の利用には、所有林や境界線を確認する必要があります。(以下の記事参照)

 また、森林経営計画の作成や効率的な森林整備には、まとまった森林地が必要であり、一帯の森林所有者や境界線の確認が必要不可欠です。

 さらには、境界が分からないことから所有林を法的に確定することができず「森林地を売却できない」「手放したくても手放せない」という方も増えています。

 所有林の名義変更(登記)の手順については次回以降、記事にまとめたいと思います。

 それでは、どうすればこれらの課題を解決できるのでしょうか。

 本記事では、まず実際の境界線確認の手順と課題を紹介します。

 そして、2019年より「林地台帳制度」が開始されたことによる今度の日本の森林・林業の展望についてご紹介していきます。

森林所有者の世代交代による課題

 以前は森林所有者の方同士が、隣接する所有林の境界線を把握していました。

 ところが最近は、森林所有者の世代交代により「所有林の場所が分からない」「隣との境界が分からない」といった問題が全国的に急増しています。

 また、森林所有者の方が法務局に登録されている地番をもとに、森林組合や林業会社が確認を行うのですが、公図が古く正確な境界が分からないため、森林経営計画を作成する際の森林面積が算出できないといった問題があります。

 公図は明治時代の地租改正の際に作られたもので、聞き取りだけで作られたものも多く信頼性は低いです。

 公図の他には、森林経営計画図、地籍図などがあり、地籍図は測量を行って作られたもので正確です。(下図参照)

引用:全農協

 しかし、国土調査員による森林の地籍調査の進捗率は45%に留まっています。(平成28年)

境界の確認作業

 宅地や農地の場合、地籍調査は周りの建築物や耕作した痕跡を元に行われますが、森林の場合は、境界杭を手掛かりに所有林の境界を確認していきます。

 ところが、実際には境界杭がなかったり見つからない場合が多々あります。

 そのような場合には、以下の杭以外の目印を確認していきます。

  • 立木に書き付けた印
  • 異なる樹種や大きな岩
  • 植栽列の並び
  • 尾根や沢などの自然地形

 このような目印をもとに隣り合う所有林の境界としています。

境界線の確定方法

 このように、境界線が曖昧な森林に関しては、杭や自然の目印をもとに境界を確認し、公図を地籍図へと更新する際は、国土調査員の立会いが必要となります。

 これには、法的な手続きも必要であるため、最終的には隣接する森林所有者の方の承認が必要になります。

 これらの作業は、森林組合の職員や林業会社、地元の森林に精通している方が、第三者の立場から資料を提供したり助言を行ったりと、双方の森林所有者の方が境界を確認しやすくなるように進めていきます。

 しかし、隣接する森林所有者の方の情報は、個人情報の取り扱いにより開示されておらず、地元の森林に精通している方の記憶によって所有者の確認が行われる場合が多く、また所有者が行方不明の場合があります。

 現在、長期間未登記の土地は全国で約410万haにものぼり九州の約368万haの面積を上回っているとされています。(所有者不明土地問題研究会, 2017年)

林地台帳制度の開始

 こうした背景から2016年の森林法改正を受け、2019年より各市町村で「林地台帳制度」の運営が開始されました。(下図参照)

 各市町村が主体となって、森林所有者や境界線に関する情報などを整備・公表する制度です。

 検索サイトで「林地台帳 閲覧 お住まいの市町村」で検索すると確認することができます。

 この制度は、林地台帳の一部を公表し森林整備の集約化や効率化のために活用することを目的としています。(林野庁)

※公表については個人の権利利害を害するものを除いて実施され、森林整備は確認が取れる森林所有者の依頼によって行われます。

 実際に境界線の確認やその整備を行うのは、森林組合や林業会社であり以前と変わらない構図ですが、林地台帳制度の開始により隣接する森林所有者の確認ができるようになっています。

※所有者が行方不明の場合は、市町村が「森林バンク」として代わりに森林の経営・管理を行い、林業会社に依頼します。

 林野庁のホームページでは「林地台帳制度」の実施により以下の効果が期待されるとしています。

  • 森林の集約化が進み間伐等が利用可能となり、森林が健全化すると共に地域の雇用創出に繋がる
  • 地域材を利用する産業が活性化し、地方創生に繋がる
  • 所有者・境界が明らかになることで、伐採・植林の指導監督や災害復旧事業・公共事業等の円滑化に繋がる

 オーストリアの林業は、これらのシステム整備がなされ、森林整備の集約化や植林が盛んに行われており、健全な森林サイクルの形成がなされています。(以下の記事参照)

最後に -日本の森林・林業の未来とは-

 日本でも、このように少しずつですが日本の森林・林業の状況を変えようとする取り組みが始まっています。

 Woodyニュースを通じて読者の方に、この日本の森林や林業の現状について少しでも興味を持っていただけますと幸いです。

 以上が「日本の森林・林業の未来とは!?所有林の境界線確認方法と林地台帳制度を紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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 またこの記事を読んで、少しでも森林や林業について関心を持って頂けると幸いです。