本記事では、珍しい形の花が特徴の”春の花木”についてご紹介していきます。

 春は””や””の白やピンクといった色が代表的ですが、春のぬくもりを感じることができる色鮮やかな黄色い花も印象的です。

 本記事で紹介する「サンシュユ・ロウバイ・トサミズキ・ミツマタ」は、遠目には黄色い花をつけた樹木にしか見えないですが、近づいて観察してみると、珍しい花の形をした印象的な”春の花木”です。

 これらの魅力ある”春の花木”の特徴や見分け方について、ご紹介していきますので、最後までお付き合い頂けますと幸いです。

珍しい花の形が特徴の”春の花木”を紹介!サンシュユ・ロウバイ・トサミズキ・ミツマタを見分ける方法とは!?

 まず、早春に一番先に花を咲かせるのは”ロウバイ”です。

 開花時期は例年1月〜3月頃で、香りの良い黄色い花を咲かせます。

 ちょうど梅と同じ時期に花を咲かせるため、この名前が付いたとされています。

 マンサク科の”トサミズキ”は、枝いっぱいに黄色い花をつけ、細い花びらを風に揺らして咲いています

 また、民謡で「庭のさんしゅうの木…」と歌われる”サンシュユ”は、黄色い線香花火の様に枝々に多数の花が咲き誇っています。

”サンシュユ(山茱萸)” -ヤマグミで知られる子供時代のおやつ-

 ”サンシュユ(山茱萸)”は、中国原産のミズキ科の落葉小高木です。

 別名はサワグミアキサンゴと呼ばれています。

 サンシュユが日本へ渡来してきたのは江戸時代と言われており、種の部分が薬に用いられることから栽培が開始しました。

 名前の由来は中国語の”山茱萸”の音読みが、そのまま”サンシュユ”の和名になっています。

 さらに”茱萸”は、実がグミに見えることを意味しており、日本でも「ヤマグミ」と呼ばれ親しまれています。

 私も子供の頃に”ヤマグミ”を見つけては、食べていた思い出があります。

 ”ヤマグミ”は実が若いと酸味が強く、渋みがあり食べられませんが、完熟すると適度な酸味となり食べることができます。

 このように秋に赤い実を熟し、ビタミンCが豊富に含まれていることから健康食品果実酒としても利用されています。

 特に”ショリコ”という品種は、食用に品種改良されており、通常の3倍以上のサイズの実をつけます。

 見分けるポイント

  • 開花時期は例年3月頃。
  • 葉に先立って黄色の花を小枝いっぱいに付ける。
  • ミズキ科の葉脈は平行
  • 葉裏の葉脈に茶色の毛

”ロウバイ(蝋梅)” -冬季に庭先を彩る貴重な花木-

 ”ロウバイ(蝋梅)”は、中国原産のロウバイ科の落葉低木です。

 名前の通り、蝋細工のような可憐な黄色の花を咲かせます。

 また、開花時期は例年1月〜2月頃で、冬季に庭先を彩る貴重な花木として知られています。

 そのため、観賞用として庭や植木鉢によく植えられています。

 また梅に似た良い香りを放ち、開花時期も近いことから「ロウバイ(蝋梅)」という名前がつけられました。

 特徴的なザラザラとした大きな葉は、ムクノキと同様に研磨材として利用することができます。

ムクノキ(椋木)とエノキ(榎)とはよく似ており、これらの木を使った格言・諺を以下の記事で紹介しております。

 見分けるポイント

  • 開花時期は例年1月〜2月頃。
  • 葉に先立って香りの良い黄色の花を下向きに付ける。
  • 花弁は多数で、螺旋状に付ける。
  • 葉は対生で、表面はザラついている。
  • 葉形は卵形で、先端が尖っている。

”トサミズキ(土佐水木)” -土佐に多く自生する花木-

 ”トサミズキ(土佐水木)”はマンサク科の落葉低木です。

 高知県の土佐に自生していることが多いことから、この名前が付けられました。

 トサミズキの黄色い花は非常に色鮮やかで、珍しい花の形から切り花にも用いられています。

 また枝が弓なりに反って広がり、樹形が美しいことから庭木街路樹としてもよく植えられています。

 そのためトサミズキは、春先に一般的に見ることができます。

 また、トサミズキによく似た花木としては「ヒュウガミズキ」が挙げられます。

 共に花が穂状となりますが、トサミズキの花は7〜8個であるのに対し、ヒュウガミズキは1〜2個と少ないことで区別できます。

 見分けるポイント

  • 開花時期は例年3月〜4月頃。
  • 7〜8個の黄色の花を穂状に垂れ下げる。
  • 葉はハート型で鋸歯がある。
  • 側脈のわきから斜めに葉脈を出す。

”ミツマタ(三股)” -三つに分かれる枝が名前の由来-

 ”ミツマタ(三股)”は、ジンチョウゲ科の落葉低木で、同じくジンチョウゲ科のガンピ、クワ科のコウゾと並び、木の皮が”和紙の原料”として知られています。

 また紙幣の原料としても用いられており、明治時代になりガンピの栽培が難しいことから、栽培が簡単なミツマタの利用が開始されています。

 しかし、2005年以降は生産量が減少し、現在国内では岡山県や徳島県、島根県の3県でのみの生産となっています。

 2016年度では、使用量の90%はネパールや中国から輸入されたものが利用されており、国産では30kg当たり9万5400円の過去最高価格にまで上昇しています。(国立印刷局, 2018年)

 ミツマタは、その名の通り枝が三つに分かれて伸びるのが特徴です。

 一般的には、落葉低木は花期以外は鑑賞の対象にならないため覚えにくいものですが、ミツマタはこの枝分かれの特徴により簡単に覚えることができます

 また、その美しい花は古来より縁起の良いことを意味する「幸草(さきくさ)」と呼ばれています。

 春されば まづ三枝(さきくさ)の 幸(さき)くあらば 後(のち)にも逢はむ な恋ひそ吾妹(わぎも)
 春が来れば、まず咲き始める”さきくさ”のように、無事でいたならまた巡り会えるのだから、そんなに恋しがらないでおくれ、私の妻よ。

引用:作者未詳「万葉集」 巻10-1895

 このようにミツマタは、古くから和歌和紙として、広く一般的に知られた”春の花木”となっています。

 見分けるポイント

  • 開花時期は例年3月〜4月頃。
  • 花は黄色で球状
  • 葉は輪生状

最後に – 珍しい花の形が特徴の”春の花木”

 本記事で紹介した「サンシュユ・ロウバイ・トサミズキ・ミツマタ」は、珍しい花の形が特徴です。

 このように、春を代表とする”桜”や”梅”以外にも、春を楽しませてくれる花木はまだまだ存在しています。

 また黄色い花は、春の澄み切った青空に溶け込み、春に柔らかい印象を与えてくれます

 ぜひ、本記事で紹介した春の花木を見つけた際は、本記事を参考に春の花木を見分けて、春を楽しんで頂けると幸いです。

 以上が「珍しい花の形が特徴の”春の花木”を紹介!サンシュユ・ロウバイ・トサミズキ・ミツマタを見分ける方法とは!?」になります。

 本記事を参考に、お花見をさらに楽しんで頂けると幸いです。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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