街路樹は、自然に触れる機会の少ない都心の中では、最も身近にある自然の一つです。
現在、全国には700万本近い街路樹が植えられており、東京においても様々な種類の樹木が植えられています。
そして、そのほとんどが落葉樹です。(以下の記事参照)
また、”ヒートアイランド現象”により気温が上がる都心部にとっては、街路樹は気温を下げる貴重な存在です。(以下の記事参照)
全国的に見ると、街路樹で最も本数が多いのは”イチョウ”であり、2位がサクラ類、3位がケヤキ、4位がハナミズキ、5位がトウカエデとなっています。
”プラタナス”は、全国的にもよく見ることのできる街路樹であり(10位, 2012年)、以前はイチョウに次いで最も多い街路樹でありました。
しかし、近年は”春のお花見”や”秋の紅葉狩り”などの集客力のある樹種が数多く植えられるようになり、取り上げられることが少なくなっています。
本記事では、このような街路樹の二大樹種である”イチョウ・プラタナス”について紹介していきます。
また、東京問わず全国的に目にする機会の多い樹種でもあるので、ぜひ最後までお付き合い頂けると幸いです。
”イチョウ(銀杏)” -ぎんなんを種子に持つユニークな葉の形-
”イチョウ(銀杏)”は、中国原産のイチョウ科の落葉高木で、1属1種しかありません。
また、平らな葉であるにも関わらず”針葉樹”に分類されていることで有名です。(以下の記事参照)
”イチョウ”は、中国にわずかに残存していたものが、観音信仰と共に僧侶によって日本に渡来したとされています。
そのため、神社境内にも数多く植えられています。
また、東京都を問わず日本の街路樹で最も植えられている樹木は”イチョウ”です。
東京の”シンボルマーク”にもなっており、最も馴染みがある街路樹ではないでしょうか。
※最新の東京都内の街路樹ランキングでは”ハナミズキ”が最も多い樹種になりました。(以下の記事参照)
このように、街路樹として”イチョウ”が数多く植えられる理由としては、排気ガスや硬い地面という厳しい環境でも強く長生きする点が挙げられます。
また、葉に水を貯える性質があり火災に強く、江戸時代には”除け地”として利用されていました。
”イチョウ”は、末広がりの扇型の葉が特徴で、秋の黄色の紅葉が美しく、もみじと並び”秋の代名詞”となっています。
また雌雄異株であり、”ぎんなん”を付けない雄株が数多く植えられています。
しかし、幼樹のうちに雌雄を見分けることが困難な樹木で有名です。
そのため誤って、扇型の葉先が割れたものと割れていないものを、”スボン”と”スカート”に見立てて、割れたものを雄株、割れていないものを雌株と区別されていることがあります。
実際には、開花した時の”花”を見るまでは、性別は分かりません。
そのため街路樹では、挿し木を行い、クローンを作ることで雄株を増やす方法が主になっています。
以上の点から”イチョウ”は、古くから研究対象となることが多い樹木でした。
またその希少性から、ヨーロッパでは”生きた化石”として珍重されています。
ちなみに、学名であり英語の「Ginkgo」は「銀杏」の字音を誤って記載したことが名前の由来とされています。
また小石川植物園では、1896年に平瀬作五郎博士が”イチョウの精子”を発見した”大イチョウ”が有名です。
”イチョウ(銀杏)”については、以下の記事でも紹介しています。
見分けるポイント
“プラタナス(鈴懸木)” -迷彩柄の樹皮で落葉後も見分けがつく-
”プラタナス(鈴懸木)”は、スズカケノキ科の落葉樹高木で、樹皮が剥がれて見える”白色”と”淡緑色”のまだら模様(迷彩柄)の樹皮が特徴です。
東洋種のスズカケノキ、北米種のアメリカスズカケノキ、および2種間の雑種の”モミジバスズカケノキ”があります。
”モミジバスズカケノキ”は歴史的にも、世界初の”一代雑種”と言われており、日本のプラタナスのほとんどは”モミジバスズカケノキ”です。
”モミジ”のように”切れ込みのある葉”をつけることから名付けられました。(以下の記事参照)
「プラナタス」はラテン語で「platys = 広い」を意味しており、直径20cm〜25cmにもなる大きな葉をつけます。
古代ギリシャでは”並木”として用いられ、”世界四大並木樹種”の一つに数えられています。
※世界四大並木樹種:プラナタス・トチノキ・ニレ・シナノキ
明治の初めに「新宿御苑」や「果樹研究所カンキツ研究興津拠点」に植えられたものが”挿し木”によって増やされ、日本全国に分布するようになったとされています。
現在でも、新宿御苑や日比谷公園などで見事なプラタナスの大木を見ることができます。
「スグカケノキ」という和名は、秋につける球形の果実が”鈴”に似ていることから「スズカケノキ(鈴掛木)」の名前が付けられました。
一見すると”クリ”のような球形の果実ですが、中には果肉はなく、綿毛がギッシリと入っているのが特徴です。
海外では実が”鈴”ではなく、”ボタン”に例えられ「ボタンボールツリー」や「ボタンウッド」などの呼び名もあります。
街路樹のプラタナスが果実を付けないのは、年に数度枝が選定されるからです。
幹が曲がってしまっているものが多いですが、選定を適度に行うと、高さが30mを超える樹姿の整った高木となります。
見分けるポイント
最後に – 街路樹の将来
日本では、街路樹の本数は年々増え続けていますが、その後の手入れが重要であります。
また、街路樹の育成は手間がかかるため、将来的な時代のニーズを見通して樹種を選択する必要があります。
例えば日本の国花である”サクラ”は、国内外問わず集客力がありますが、根が浅いため歩道の路面を持ち上げる問題があります。(以下の記事参照)
そのため、路面の景観が損なわれてしまう可能性があり、また転倒のリスクも高くなります。
”ケヤキ”の場合は、樹高が高く木陰を作りますが、その分剪定のコストが高くなります。
このように、街路樹にも考慮すべき点があることを理解した上で、植栽する必要があります。
しかし植える樹種によって、かつての銀座通りの”ヤナギ”や、2020年の東京オリンピックに向けた”カツラ”の植栽においても、街路樹はその街特有の景観を作り出す魅力的な存在です。
このように、街路樹は”時代のシンボルツリー”となり、樹種を見分けて観察することは一つの楽しみ方であります。
樹種によって作り出す街の景観の違うので、ぜひ一度、街路樹をゆっくり観察してみて下さい。
以上が「東京の街路樹の二大樹種”イチョウ・プラタナス”の木や実の特徴と見分け方を紹介!」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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