街路樹は”まちの景観”を美しくし、高いビルが立ち並ぶ都心においても四季折々の空間を作り出し安らぎを与えてくれます。
機能的な役割としては、風を防いだり、夏の日差しを和らげ気温の上昇を抑える効果があります。
また、道路沿いに植えると”ガードレール”の役割を果たし、運転の視線誘導や車の排気ガスや騒音を緩和させるなど、さまざまな効果が期待されています。
現在、全国には700万本近い街路樹が植えられており、最も本数が多いのは”イチョウ”であり、2位がサクラ類、3位がケヤキ、4位がハナミズキ、5位がトウカエデとなっています。
”イチョウ”が最も植えられている理由としては、排気ガスや硬い地面という厳しい環境でも強く長生きする点が挙げられます。
この特徴を活かし、交通量の多い大阪・御堂筋では4列のイチョウ並木が4kmにわたって植えられています。
本記事では、そのような街路樹の中でも”美しい樹木”として知られる「ソメイヨシノ・シダレヤナギ・ユリノキ」の3種類の樹木の特徴と見分け方について紹介していきます。
最後まで、お付き合い頂けると幸いです。
”ソメイヨシノ(染井吉野)” -最も多く植えられている種類-
万葉時代には”ウメ(梅)”の方が好まれていました。(以下の記事参照)
しかし平安時代に入り、特に愛されるようになったのが”サクラ”です。
サクラは日本の”国花”でもあり、ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラなどの野生種および変種も含めて、全国に100種以上が自生しています。(以下の記事参照)
その中でも、街路樹として使われることの多い”ソメイヨシノ”は、”オオシマザクラ”と”エドヒガン”との雑種であることは有名です。
現在、東京の街路樹のほとんどは”ソメイヨシノ”であり、春には”ソメイヨシノ”を観に、国内外問わず多くの観光客が訪れています。(以下の記事参照)
花が散ってしまった後は、他の樹木とほとんど見分けがつかない”サクラ”ですが、見分けるポイントは「葉と樹皮」です。
サクラの葉の基部には必ず2つの”蜜腺”があり、樹皮は黒褐色で、横筋の模様が見られることが特徴です。
見分けるポイント
”シダレヤナギ(枝垂柳)” -30種類以上のヤナギの代表格-
ヤナギ科ヤナギ属に分類される樹木を総称して”ヤナギ”と呼んでいますが、一般的には”シダレヤナギ”を指すことが多いです。
”ネコヤナギ”や”バッコヤナギ”など、日本には30種類以上のヤナギが分布していますが、姿形が似ており、これらの識別は非常に難しいです。
しかし、風に揺られる風情は”シダレヤナギ”独特のものであり、各地の街路樹や並木として親しまれています。
幹は黒灰色で、縦に深く割れているのが特徴です。
また、ヤナギは「柳」や「楊」とも書きますが、「楊」は”ポプラ(セイヨウハコヤナギ)“や”ヤマナラシ”などの「ハコヤナギ属」の樹種を指しています。
※ヤナギについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
見分けるポイント
”ユリノキ(百合木)” -葉の形に着目-
近年、街路樹として盛んに植えられるようになった”ユリノキ”は、四季を通じて端正な美しさを保つ落葉高木です。
葉先が平たく、葉の形が”半纏”(またはTシャツ)に似ていることから「ハンテンボク」とも呼ばれます。
また、初夏に咲く花が”チューリップ”に似ていることから「チューリップツリー」とも呼ばれています。
樹皮は黒灰色で、縦に割れ目ができるのが特徴です。
”ユリノキ”は北米原産で、日本には明治時代に渡来しました。
新宿御苑の大芝生の中央に立つ、巨大な”ユリノキ”は、当時の幼樹が成長したものです。
また、迎賓館前のユリノキ並木が美しいことでも有名であります。
※ユリノキについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
見分けるポイント
最後に – 散歩したくなる街づくり
街路樹は、種類によって”魅せる季節”というものがあります。
サクラは”春”が美しく、ヤナギは”夏”に活気があり、ユリノキは”秋”の紅葉が綺麗です。
近年では、冬にイルミネーションが装飾され、街路樹は一年を通して楽しませてくれる存在になりました。
”魅せる季節”とは、人が勝手に決めたものですが、たとえば”春”の美しいサクラを見ると、心がワクワクし、散歩したくなる気持ちになります。
気持ちが落ち込んでいる時でも、運動をしたい時でも、通勤中でも、このように”魅せる季節”の街路樹は、初心に返るような高揚感や、一息つける時間を提供してくれます。
近代化が進んだ現代ですが、自然が必要不可欠であると感じさせてくれる存在が都心の”街路樹”なのです。
以上が「”葉”や”樹皮”で街路樹を見分けよう!ソメイヨシノ・シダレヤナギ・ユリノキ編」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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