新緑の”夏”や紅葉の”秋”など、ブナやミズナラ、ミズキやカツラが混生するブナ林は、四季を通して非常に美しいです。
また、青森県から秋田県にまたがる”白神山地のブナ原生林”は、世界遺産にも登録されており”もののけ姫”の舞台として有名です。
この他にも、日本には多くのブナ林が分布しており、これらの樹木は各地域で主要構成種となっています。
このように”禁忌の森”をイメージさせ、歴史を感じる”ブナ林”ですが、一体いつごろから日本に存在していたのでしょうか。
本記事では、日本の”ブナ林の起源”とブナ林を構成する主要樹種”ブナ・ミズナラ・ミズキ・カツラ”の見分け方についてご紹介していきます。
最後まで、お付き合い頂けますと幸いです。
”もののけ姫”-白神山地のブナ原生林の起源を紹介!
”もののけ姫”で描かれている日本のブナ林は、”大口径の樹木”や”コケの感じ”から、太古より存在していたような風格を漂わせています。
それではブナ林は、日本にいつ頃から存在していたのでしょうか。
このブナ林の起源は、花粉分析や埋蔵した木片、化石から”推定年齢”を調査する方法で推定されています。
この調査結果では、日本のブナ林は約200万年前から出現しており、太古から日本に生息していたことが証明されています。
現在は絶滅した”ムカシブナ”や”ヒメブナ”の存在も、この”ブナ林の足跡”をたどることで確認されており、太古に”東北地方の森林”を形成していたとされています。
そして、寒冷な氷河期では”南”へ、温暖期には”北”へ生息地を移動することで、現代まで生きながらえてきました。
そうして最終的には約2500年前に、現在の分布域に落ち着きました。
森の母”ブナ”/森の王”ミズナラ”
中部地方の山地から東北地方、北海道の南部にかけて生息する”ブナ林”の代表種が”ブナ”と”ミズナラ”です。
この2種は共に”ブナ科”に属しており、少しややこしい分類となっています。(以下の記事参照)
世界へ視点を広げてみても、”ブナ”や”ミズナラ”は、冷涼な温帯地域に生息する樹木であり、カナダや北ヨーロッパ、中国北部に分布しています。
またイギリスでは、ブナは”森の母”、ミズナラは”森の王”と呼ばれ親しまれています。
ブナが”森の母”と呼ばれる由縁は、その”樹形”や”葉”の全体に包み込むようなやさしい雰囲気を漂わせているからでしょう。
また”ミズナラ”は、表面が荒々しい”樹皮”とギザギザした”葉”を持つため、確かに男性らしさを感じます。
このような視点からブナ林を観察してみると、”もののけ姫”で描かれている風景もまた違った角度から楽しめるかもしれません。
”ブナ(橅)” -森の母と呼ばれる樹木-
”ブナ(橅)”は、ブナ科の落葉広葉樹の高木であり、”冷温帯を代表”とする樹種です。
日本海側の北部に多く自生しており、北半球に約10種類ほどが存在します。
しかし、日本に自生するのは”ブナ”と”イヌブナ”のみです。
「橅」という漢字表記は、材木として使い物にならない「”木”では”無”い」という意味を表しています。
これは、”ブナ”が水を多く含んでいるため、乾燥した際に”割れ”が生じやすいことからでしょう。
そのため、戦後の「拡大造林」では”ブナ林”は伐採され、”スギ”や”ヒノキ”などの”針葉樹”に置き換わっていきました。
しかしながら、近年の乾燥技術の向上により、ブナ材は”家具”や”器具”などに利用され始め、その材としての価値が見直されてきています。
また、ブナの果実は”たんぱく質”や”脂肪分”が多く、森の動物の大好物です。
このためヨーロッパでは、豚を育てるための”ブナの養豚林”が整備されており、”森の母”と呼ばれる由縁はここにもあるのかもしれません。
また、”ブナ”とよく似た樹木に”イヌブナ”があります。
”イヌブナ”は別名「クロブナ」と呼ばれ、樹皮が黒灰色であるのが特徴です
一方で、”ブナ”は別名「シロブナ」呼ばれ、樹皮が灰白色であることから”イヌブナ”と区別することができます。
また、”イヌブナ”の葉裏には”長い毛”があるのも一つの特徴です。
見分けるポイント
”ミズナラ(水楢)” -高級家具に用いられるドングリの木-
”ミズナラ(水楢)”は、ブナ科の落葉広葉樹の高木で、日本全国の山地や高緯度地域に自生しています。
また、よく似ている樹木に”コナラ”がありますが、平地に自生することから見分けることができます。(以下の記事参照)
「水楢」という漢字表記は、幹や枝に水分が多く含まれており、”燃えにくい”ということから由来しています。
”ミズナラ材”は、加工性・着色性に優れ、強度が大きく、重厚感があることから、高級家具や建築材、ウイスキー樽に利用されています。
このウイスキー樽としての利用は、近年では国際的な評価を受けており「ジャパニーズオーク」と称されています。
”オーク樽”と異なる繊細な風味を香りづけられる点が特徴です。
このように、雑木林の構成樹種でもある”ミズナラ”は、曲げ加工の新しい技法の発明により注目を浴びる存在となっています。(以下の記事参照)
また、20世紀にシイタケの栽培が盛んになり、”コナラ”と同様にシイタケ原木に利用されています。(以下の記事参照)
秋の紅葉はとても美しく、幼木のうちは赤く紅葉するものが一部ありますが、成長するにつれて黄葉することが多いです。
また”ミズナラ”は、”コナラ”と同様にドングリが有名な樹木です。
ブナ林いっぱいに、楕円形のドングリを落とします。
”ミズナラ”は、ドングリを実らせる樹木の中でも”タンニン”をより多く含み、アク抜きが面倒ですが、縄文時代では”冬季の保存食”として重宝されていました。(以下の記事参照)
見分けるポイント
”ミズキ(水木)” -ハナミズキと仲間の花木-
”ミズキ(水木)”は、ミズキ科の落葉広葉樹の高木で、日本各地に自生しています。
名前は、根から水を吸い上げる力が強く、春先に枝を切ると水がしたたり落ちることから由来しています。
そして名前からも分かりますように、花木として人気のある”ハナミズキ”の仲間で、5月〜6月に開花時期を迎えます。
しかし、”ハナミズキ”と比べ、その花色は控えめです。(以下の記事参照)
また、材は緻密で加工しやすく、成長は早いですが年輪の目立たない木材です。(以下の記事参照)
そのため、コケシやおもちゃ、印鑑、漆器の木地に利用されています。(以下の記事参照)
見分けるポイント
”カツラ(桂)” -ハートの形をした特徴的な葉っぱ-
ミズキ科の落葉広葉樹の高木で、日本各地に自生しています。
”ミズキ”と同様、庭木としても植えられており、材はコケシやおもちゃに利用されています。
特徴的なハート形の葉は、秋に黄葉になり、ところどころ赤みがかかった褐色となり美しいです。
地上に落ちた葉は、1日〜2日で茶色になり、砂糖醤油せんべいのような甘く香ばしい香りを漂わせています。
※カツラについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
見分けるポイント
最後に – 残された白神山地
ブナ林は、北日本の代表的な森林の一つであります。
縄文時代以降、日本人はブナの木にさまざまに加工を施し、利用してきました。
また、近年の家具や合板への利用の増加により、ブナ林の分布域は減少傾向にあります。
また、”白神山地”に代表されるの”ブナ原生林”は、1993年に世界遺産に指定され保護されています。
このように現代では、”ブナ林”は大切に扱われる時代であり、日本の自然史を示す遺産でもあるのです。
さまざまな種類の樹木と出会うことのできる”ブナ林”。
そこには、時が止まったかのような雄大な自然の世界が広がっています。
本記事を参考にぜひ、一度足を運んで頂けますと幸いです。
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