まぶしい日光がさんさんと降り注ぐ”夏”、セミの鳴き声が聞こえるこの季節は、樹木がもっとも成長する時期です。
太陽の光をしっかりと受け止めるため、大きく広げた緑色の葉は、せっせと糖を作り樹木の成長を促しています。(以下の記事参照)
光合成によって糖を作るためには、”水”と”二酸化炭素”が必要であります。
”水”は、分解して”糖”の構成要素となるために、また作った”糖”を幹へ送り込むために重要な役割を果たしています。(以下の記事参照)
それでは、”二酸化炭素”は樹木にとってどのような役割を果たしているのでしょうか。
二酸化炭素も同様に、光合成により炭素(C)へ分解し、”糖”の構成要素となります。
このように樹木が、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を吸収することは、とても喜ばしいことです。
特に、成長が著しい11〜14年生の樹木がもっとも二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の抑制に貢献しています。(以下の記事参照)
しかし、ここで一つの疑問が生まれます。
二酸化炭素が”糖”へと変換されるのであるならば、二酸化炭素が増えるほど樹木の成長が早いのではないのでしょうか。
またこの考えが正であるならば、二酸化炭素の排出量が多い都心へ植えた方が、樹木にとっては好ましいのではないのでしょうか。
本記事では、この樹木と二酸化炭素との関係性について紹介していきます。
最後まで、お付き合い頂けますと幸いです。
樹木と炭素(C)の関係とは!?二酸化炭素が増えるほど成長が早い?
樹木は水分を除くと、そのほとんどが炭素(C)からできており、重さうちの50%を占めています。
これは樹木が、以下の物質で構成されているためです。
・セミロース(C6H10O5)n:植物の細胞壁および植物繊維の主成分。40〜50%
・ヘミセルロース(C5H8O4)n:同上。セルロースを除く多糖類の総称。10〜30%
・リグニン(分子式不明):細胞間の接着や細胞壁の強化。20〜30%
このように炭素(C)や酸素(O)、水素(H)からなる分子で構成されています。
また、炭素は光合成により”糖”に変換され、エネルギーとして用いられています。
以上から、樹木とっての炭素(C)の役割は、
・根や幹、枝葉を構成する物質。
・光合成により糖となる成長のエネルギー源。
であると考えられます。
二酸化炭素の排出量が多い都心の方が好ましい?
これらの炭素(C)は、大気中の二酸化炭素から取り込まれています。
つまり樹木にとって、二酸化炭素は”食料”のようなものです。
それでは、二酸化炭素の排出量が多い”都心部”へ植えた方が、樹木にとっては好ましいのではないのでしょうか。
以下の記事で、”都心部”と”郊外”に植えられた街路樹の成長を調べた研究を紹介しており、郊外の樹木よりも約4倍のスピードで成長すると結論づけられています。
”都市部”の街路樹の成長スピードが早い理由として、以下の点が挙げられています。
・街路樹1本ずつに当たる光の量が多いこと。
・それぞれの街路樹に与えられるスペースが広いこと。
・光合成の原料となる二酸化炭素が多いこと。
・肥料となる窒素化物が多いこと。
・ヒートアイランド現象により、都市部は暖かいこと。
このように二酸化炭素の濃度が、樹木の成長の一つの要因となっています。
また、異なる二酸化炭素濃度の下で、苗木の成長速度を調べた研究においても、樹木と二酸化炭素との関係性が述べられています。
さまざまな樹種を育成し観察した結果、二酸化炭素濃度が2倍の条件下では、
・光合成の速度が5割ほどUP。
・乾物生産量が3〜4割ほどUP。
するという結果が得られています。
このように、高い二酸化炭素の濃度の条件下では、光合成による二酸化炭素の吸収を活発にし、樹木の成長にプラスの効果を及ぼします。
最後に – 二酸化炭素が増えるほど良いのか?
ただし、このような二酸化炭素の”成長促進の効果”については「養分条件が比較的良好である場合では、、、。」という必要条件が入ってきます。
たとえば、土壌に含まれる”窒素(N)”と”リン(P)”は、樹木の成長に必要な元素です。
樹木によって、それぞれ”数パーセント”や”零点数パーセント”含まれているのですが、与える量が少ないと栄養不足となり、成長しません。
また二酸化炭素が増えても、痩せている土壌では樹木の成長は大きくは変わりません。
そして、その成長にも限界があります。(以下の記事参照)
現在、石油など化石燃料の燃焼により、大気中の二酸化炭素は年々上昇しています。
しかしながら、大気からの”二酸化炭素”の吸収、そして土壌からの”水”と”養分”の吸収のバランスが、樹木の成長にとって重要となります。
以上が「樹木と炭素(C)の関係とは!?二酸化炭素が増えるほど成長が早い?」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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