古典期(紀元前800年〜600年)は、”古代ギリシャ”や”古代ローマ”が繁栄した時代であり、「ギリシア・ローマ世界」と呼ばれていました。
この時代の”森林”は、燃料や建築材料、軍需品の供給源でありました。
さらに、農業を行うためには”森林”を伐採していかなければならず、開墾されていない場所の”低木”や”野草”は家畜の肥料とされていました。
このため森林の利用は必需であり、これに伴う森林破壊は致しかたない結果であるとも言えます。
しかしながら、その中でもかなりの森林が古代文明を生き延びてきました。
本記事では、古代の地中海地方の”森林破壊”と”回復”の歴史についてご紹介していきます。
最後まで、お付き合い頂けますと幸いです。
古代の”木材の利用例”を紹介!
一般的に、都市国家の人口が増加するにつれて、多くの森林が伐開されなければならず、これが今日と同様、森林破壊の最大の原因とされています。
そしてこの森林の伐開は、都市の周囲だけではなく、遠くギリシャの植民地やアフリカ、その他のローマ諸国でも行われていました。
たとえ伐開されていなくても、放牧によって森林破壊がもたらされていたり、あるいは放牧のために伐開地の劣化した森林の”回復”が阻止されていたとも考えられます。
この中で、木材に対する最大の需要は”燃料”でありました。
”石炭”や”石油”をほとんど使用していなかった古代ギリシャやローマでは、”民生用”や”産業用”の燃料を森林から取らなければならず、それにより森林の伐採が盛んに行われていました。
ある研究結果では、今日の発展途上国と同様、およそ80%近くが燃料として使われていたとされています。
そして、この多くは”薪”よりも”木炭”の利用でありました。
”木炭”は、木材よりも乾燥することにより、運搬しやすくなります。
そのため、都市から遠く離れたところでも、経済的に生産できたことに起因しています。
こうして遠くの山岳林から、一年を通しての供給が可能となりました。
一方で、建築用の木材は高価でありました。
これは、先ほどの輸送コストによるものです。(以下の記事参照)
このため建築用の木材が希少となり、かつ”古典建築”が開花したことで”石材”が多く使われるようになりました。
しかしながら、それでも建設用の足場などには木材が使われていたようです。
このように都市国家の人口の増加が、森林資源の需要に深く関係していることは言うまでもありません。
地中海地方の”森林破壊”と”回復”の歴史とは!?
この結果、プラトン(紀元前427〜347年)がいた頃のアテネ周辺は、すでに”裸地”となっていたようです。
これはこの時代に、”造船”や”建設”に必要な木材が、”得にくかった”とされる歴史からも推察されます。
また森林を失った地方にて、土砂の流出が問題となったのもこの時代です。
しかし、このような状況下でありながら、古典期の最後においても森林はかなり残っていたとされています。
そして、これらの森林は、天然更新による回復によって存続してきました。
また、このように前例のない森林破壊に対しても森林資源が生き延びてこれたのは、”技術力”と”組織力”によるところが大きです。
古代ギリシャやローマでは、すでに萌芽更新の知識があったとされています。(以下の記事参照)
これにより最低限、森林を維持しながら、継続的な木材の供給がなされていました。
また、”間伐”と並び、”播種”や”植林”のやり方も一般的であったとされています。
古代の森林管理制度とは!?
しかしながら、”森林管理の制度”が適切でないと、こうした技術的な知識はほとんど活用されません。
また、たとえば家族を養うことで精一杯の”耕作者”が、森林の保護に強い関心を持つとは思えません。
そのため、ギリシャやローマはともに森林利用については、政府による規制が課せられていました。
特に”造船材”は、軍事戦略的に重要な原料であったため、アテネはその”輸出”と”再輸入”を禁じていました。
このように、相当な森林資源を保有する国は、どこでも厳格な規制を行っていました。
またその中でも、森林経営への国の介入が明確であったのは”ローマ”です。
森林はすべて事実上、国家の管理下にありました。
しかしながら、紀元前111年のローマ法では、”耕地にする目的”で12haまでの公有地を占有するものは誰でも完全な所有権が与えられていました。
そのため、大規模な農場ではかなりまとまった樹林地が確保されていて、蜜や堅果、樹脂などが生産されていました。(以下の記事参照)
このように、森林資源の経営・保全のための効果的な枠組みは、当時でも存在していたのです。
最後に – 日本の林業が乗り越えなければならない課題
日本は現在、国土面積約3,800万haのうち、森林面積が約2,500万haを占めています。(1ha当たり100m×100m)
この森林率は国土の約70%に相当し、OECD(経済協力開発機構)の加盟国の中で、フィンランド(73%)についで、世界2位の森林大国です。
しかし、これだけの森林率を有しながらも、たとえば”オーストリア”では森林資源の成熟と、その活用が日本より一足早く進んでいます。(以下の記事参照)
これは、ひとえに”森林の経営・管理の集約化”と”製材工場の大規模化”によるものであると言われています。
このような背景から、日本でも2019年より「森林経営管理制度」がスタートしました。(以下の記事参照)
このように少しずつ国家が関与することで、今まで進んでこなかった”森林の経営・管理の集約化”や”境界線の問題”が着手され始めています。(以下の記事参照)
日本の森林・林業も変わりつつあります。
以上が「地中海地方の”森林破壊”と”回復”の歴史とは!?古代の木材の利用例を紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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