2019年4月1日から森林環境税制度が始まっています。
この新税制度は、個人住民税に上乗せする形で1人当たり年間1,000円徴収されるもので、税収総額は約600億円になります。
以下、林野庁が公表した「森林環境税」に関する抜粋文です。
パリ協定の枠組みの下における、わが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や、災害防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、 森林環境税及び森林環境譲与税を創設する。
引用:森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律
「パリ協定」で森林が担う役割
「地球温暖化対策「パリ協定」と「森林」が担う役割とは!?」でも述べていますが、日本には2030年度には二酸化炭素排出量を26%減らす(2013年度比)目標が課せられています。
これにより、現在日本は目標達成に向けた早急な地球温暖化対策が求められています。
国土の70%を森林が占めている日本では、森林が担当する二酸化炭素排出削減目標も高く、2030年までに、年間平均52万ヘクタール(1ヘクタール当たり100m x 100m )の皆伐・間伐の実施(愛知県の面積に相当)が必要となります。
皆伐や間伐をすることで、二酸化炭素が削減される理由については、以下の記事で紹介しています。
2015年時点での林業就業者数は45000人であり、この目標を我々が担当することになります。(林業労働力の動向:林野庁)
5年早くスタートした森林環境税制度
現在、東日本大震災を教訓とした防災施設対応分の税収が、同じ金額で徴収されています。
当初の予定では、この税収が2023年度で終わり、入れ替わる形で2024年度から「森林環境税制度」が始まる予定でした。
しかし、実際には2024年度を待たずに将来の「森林環境税」から前借りする形で、2019年4月1日からスタートしています。
2019年度は200億円の総額でスタートし、2021年以降に600億円の税収総額となる予定です。
森林環境税収はどう割り振られるのか
問題は、こうして徴収された税収がどのように使われるかということだと思いますが、集められた森林環境税は市町村へ分配されます。
分配額は、森林環境税総額の90%に相当する額を、以下の割合で各市町村へ配分されます。
残りの10%も同様に計算され、市町村ではなく、各都道府県に分配されます。
この割合によって計算された合計値を各市町村順に並べ、数値の大きい順に分配金額を割り振っていきます。
実際の2019年度9月の配布額は「森林環境譲与税譲与額一覧」を参照下さい。
森林環境税はどのように使われるのか
市町村は、林野庁が作成した新しい森林管理システムに則り、以下の取り組みを行います。(森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律)
この制度は「市町村へ分配される」という点がポイントになります。
具体的な取り組みの一例としては、市町村が「森林バンク」を設立し、以下の対象の森林を市町村が預かります。
市町村がこれらの森林を意欲のある地域の林業事業体に委託し、木材生産をさせるという計画です。
まとめると、地域の荒廃した森林を市町村が管理・再生していくというものです。
最後に -日本の森林の現状-
最近ではニュースにも取り上げられ、ご存知の方もおられると思いますが、実際に所有者に連絡が取れない、所有森林地の相続がうまくいっていない、連絡が取れても境界が分らず手入れが出来ないというケースが増えています。
また、境界が分からず、森林を手放したくても手放せないという方も増えています。
こういった森林は荒廃していく一方なので、市町村が変わって管理すると言うのは一つの解決策だと思います。
しかし、市町村の実情は人員がどんどん削減され、職員一人に掛かる負担が大きくなっているのが現状です。
また、今回の制度の導入でさらに業務が増えるとなると、果たしてそれは上手く機能するのだろうかという疑問も湧いてきます。
分からなくなった境界線を明確にすること一つ考えても、隣り合う森林所有者の方が、実際に森林を見に行き、市町村担当者と林業者が仲介役を担当し、一つ一つ解決して行かなければならない問題です。
以上のように、新税の使い方については解決しなければならない問題が数多くあると思います。
「すでに手遅れでは?」という声もあります。いずれにしても、国民一人一人が支払う税金なのですから、森林が本当に良くなるような使い方を国には示して頂きたいものです。
以上が「2024年から本格的に始まる「森林環境税」とは!?」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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