森林において、もっとも重要とされる機能は「物質生産機能」です。
”物質”とは、建築材や燃料、食料を生産する機能のことです。
柱や板などの”建築材”や、薪の”燃料”、木の実やキノコなどの”食料”、落ち葉など畑にまく”肥料”もこれに含まれます。
特に”建築材”は、鉄筋コンクリートや鉄骨造りの住宅が建築される現代でも、温かみのある材質や、心落ち着く芳香など、木の本来の特徴を活かした住宅には需要があります。
”燃料”の側面においては、バイオマス燃料としての地産地消の木質チップが注目され、クリーンエネルギーとしての役割が期待されています。
また、キノコの市場マーケットは大きく、特用林産物 (キノコ・果実・山菜・漆・木ろう・竹材・桐材・木炭) の全体の生産額の90%を占めています。
このように、森林の「物質生産機能」は、私たちにもっとも馴染みのある機能の一つです。
森林によって形作られた日本文化とは!?
しかしながら、こうして身近に存在し、当たり前に手に入る”木”は、それが故にあまり考えられる機会が少なくなったのかもしれません。
現代のように電気やガス、石油がない時代では、この森林の「物質生産機能」は生活において必要不可欠なものでした。
森林は冬を越すための食物を提供し、雨風をしのぐ住居や、農耕をするための工具までもたらしました。
そのため昔の人々は、山の神様に感謝し、お供えものを供えるという風習がありました。
山の中には神社やほこら、お地蔵さんが多いのもこのためです。
「自然の中には八百万に神様が宿る」という日本人の考えもこれが故でしょう。
こうして現代においても、花見や紅葉狩りをして楽しむ心は引き継がれており、日本の伝統的な文化として海外に紹介され、桜の開花シーズンである4月には292万人(2019年)の外国人観光客が訪れる観光産業にまで成長しています。(日本政府観光局(JNTO)「訪日客数(総数)」)
このようにふと自然を懐かしく感じるのは、古くより受け継がれている日本人精神なのかもしれません。
森林は貴重な資源!
現在、日本の森林には52億㎥を超える木材が蓄積されています。
一方で、日本の木材の年間需要量はおよそ8千㎥ですから、このまま森林の成長が止まったとしても65年分の蓄積があることになります。
これは木材の質を考慮していない計算なので、これほど長期利用とはならないはずでしょうが、バイオマス燃料用としての木質チップの有効活用が今後さらに進むとすると、余すことなく木材を利用できると考えることもできます。
いずれにしても、資源が少ない日本において、森林は貴重な資源の一つとなっています。
森林の成長率と木材需要から見える日本の木材事情を紹介!
しかしながら、実際には木は成長しています。
大気中の二酸化炭素を取り込み、光合成を行うことで、その炭素分を胴体の血肉としています。
またその成長量は大きく、下のグラフより計算すると、5年平均で10%ずつの成長が見られています。
そして、これは加速度的に伸びつつあるようにも見えます。
現在、日本の森林率は国土の約70%に相当し、OECD(経済協力開発機構)の加盟国の中で、フィンランド(73%)についで、世界2位の森林大国となりました。
しかしながら、本来であれば成長分を収穫することで、森林の若返りを図り、農業のようにそのサイクルを回していく必要があります。
林内に降り注ぐ日光は、新たな栄養分を生み、次世代の成長へと繋がります。
そのため、木の成長量と供給量のバランスを取ることが重要となってきます。
一方で、先述のように日本の木材の年間需要量はおよそ8千㎥です。
そしてこのうち、5千㎥は輸入材によって補われています。(林野庁, 2018年度)
このように、現在の日本の木材自給率は36.6%であり、エネルギー資源だけでなく木材においても海外からの輸入に頼っている現状があります。
最後に – 林業が置かれる立ち位置
森林の「物質生産機能」は、古くより生活において必要不可欠な機能であり、現代の日本文化や考え方にまで引き継がれる要素となっています。
また森林は、資源が少ない日本において貴重な資産の一つであり、日本は世界有数の森林大国でありながらその木材自給率は36.6%に留まっています。
林業は自然環境が関わる業界ですが、Woodyニュースを通じて日本の森林状況や林業について理解していただき、関心を持っていただけますと幸いです。
以上が「森林の「物質生産機能」とは!?成長率と需要から見える日本の木材事情を紹介!」になります。
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