ヒノキ(桧)は、スギに次いで造林面積が広く、スギと共に日本の代表的な木材です。(以下の記事参照)

 戦後の拡大造林計画において、ヒノキは日本各地で植林され、スギに次ぐ第2位の植林面積(260万ha, 25%)を誇ります。

 スギの方が植林面積が多い理由は、スギは植林してから約40年程度で収穫できるためであり、ヒノキは植林してから収穫までに50〜60年程かかります。

 またヒノキを建材に利用するためには、真っ直ぐな無節材にする必要があり、間引き作業などの手間がかかります。

 この2点から、ヒノキの方がスギよりも高値で取引されています。

 以下に参考として、日本の代表的な「スギ・ヒノキ・カラマツ」の2017年の素材価格を紹介します。(農林水産省:木材価格)

  • スギ:13,100 (円/㎥)
  • ヒノキ:18,100 (円/㎥)
  • カラマツ:11,900 (円/㎥)

※素材価格については、以下の記事でも紹介しておりますので、ご興味がある方はぜひご参照ください。

古来より建築材として用いられてきた歴史

 ヒノキは非常に優秀な建築材料で、「総桧作り」は高級建築の代名詞として使われていきました。

 総桧作りとは、土台や柱、梁、根太、大引などの構造材や内装のほとんどにヒノキ材を用いている建築を指します。

「ヒノキ」の名前の由来は「火の木」の意味で、火起こしに使われたとされる説と、尊く最高の意味を表す「日」から「日の木」と呼ばれるようになったとされています。

 杉および樟、この両の樹は、もつて浮宝とすべし。檜はもつて瑞宮をつくる材にすべし。柀はもつて臥さむ具にすべし。

スギとクスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使うべきである。」

引用:日本書紀「古事記」

※「クスノキ(樟)の船」については以下の記事でも紹介しています。

 上記の引用より「古事記」のスサノオの神話の中にも「宮殿にはヒノキ材を使うように」と記されています。

 もちろんスギや、その他広葉樹を用いている建築物もありますが、このように宮殿や歴史的な建築物には、ヒノキ材を用いられていることが多いです。

 このことを裏付ける出土品が、奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡から発見されており、古墳時代の宮殿に用いられたとされるヒノキの部材が出土しています。

 また、古墳時代後期になると、樹種はヒノキやスギなどの針葉樹を用いている建築物が多くなり、西日本ではスギよリヒノキ材が多用されている傾向にあります。(出土建築材資料集:PDFファイル

 このように古来よりヒノキ材は、建築材として用いられてきました。

ヒノキ材の強度

 ヒノキはケヤキやカシ、ナラに比べると軟らかいですが、丈夫で粘りがあるため、法隆寺を支える柱にヒノキが用いられています。

 このヒノキ柱は法隆寺を約1300年以上支えており、今後も1000年は堅固であると言われています。

 ヒノキは伐られてから強度が2〜3割増します。(下図参照)

 その後、徐々に強度が弱くなりますが、1000年以上経過した後でも伐採時と同じ強度を保っています。

引用:森林・林業学習館 (強度は圧縮強度)

 このように日本人は古くから、ヒノキが優れた建材であることを知っていたと考えられます。

最後に -首里城に用いられた台湾ヒノキの特徴-

 ヒノキは福島県を北限とし、南は台湾まで分布しており、日本と台湾でのみ生息する樹木です。

 そのため「台湾ヒノキ」は、沖縄と気候が近いことから「首里城」に用いられていました。

 前回(1992年)の首里城の復元では、正殿には樹齢300~500年・直径1m級の台湾ヒノキが約100本使われていたとされています。

 しかし現在、台湾ヒノキは輸出制限がかかっており、首里城再建に向けて台湾ヒノキの代わりとなる木材を検討する必要があります。

 次回は、首里城に用いられた台湾ヒノキの特徴について紹介します。

 以上が「なぜヒノキ(桧)はスギと比べて高価なのか?建築材としての歴史と特徴について紹介!」になります。

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