イタヤカエデは、北海道から九州までの広い範囲に分布するカエデ科の一種です。東北地方などの寒冷地の山地でよく見られます。

 また、黄色く紅葉した葉が美しいことで有名です。街路樹や公園樹などでも見かける、秋を代表する樹木です。

 イタヤカエデは、樹高15~20mの大きな落葉樹です。葉がよく繁り、最大15cmにもなる大きな葉が幾重にも重なっています

 以下、イタヤカエデに関する古い文献を参照しています。

 板屋(いたや)葉 十二ひとへのごとくにて 大きさ四五寸ほどもある物 大木の下には雨もらざるよし

引用:『花壇地錦抄』(1695):最古の園芸辞典

 名月(めいげつ)、一名いたや楓・・・葉形切数多十二ひとへのごとく随分大キなる事外になし葉多く付キたる木の下は雨露ももらぬといふ心にや板家(いたや)楓と号(なつく)もよき見たて・・・

引用『増補地錦抄』(1710):”名月”はハウチワカエデ

 このように、大きな葉がよく繁り、板屋根のように雨をさえぎる様子から「イタヤカエデ」と名付けられたのですね。

 ちなみに「カエデ」は、葉の形がカエルの手に似ていることから由来した「蛙手(かえで)」が語源となっています。

 主なカエデ語源種類については「トウカエデ(唐楓)の意外と知らない紅葉の名所と魅力を紹介!」で解説しております。

イタヤカエデの紅葉の魅力を紹介!

 イタヤカエデは、数多くあるカエデ科の中の一種です。

 他のカエデ科と同様に、葉は「もみじ」のような風情ある形が特徴的です。

 もみじについては「紅葉の代名詞「もみじ」の特徴と魅力を紹介!」で説明しています。

 秋には黄色に紅葉し、「扇形のイチョウの葉」や「半纏(はんてん)形のユリノキの葉」のような特徴的な形をした黄葉をつける、秋を代表する樹木です。

 見かけた際は、それぞれの葉形の違いを楽しむのもいいですね。

 イチョウについては「なぜ街路樹には銀杏の木が多い?秋を彩る紅葉「イチョウ」の特徴と魅力を解説!」で紹介しています。

 ユリノキについては「ユリノキ(百合の木)の紅葉の魅力と歴史を紹介!セントラルパークとの意外な関係とは!?」で紹介しています。

 しかし、イタヤカエデは、秋の始まりから終わりまで、ずっと紅葉しているわけではありません。

 イタヤカエデは、落葉する直前で黄色に紅葉します。

 別名「トキワカエデ(常磐楓)」と呼ばれており、その名前の通り、基本的には秋季も緑色の葉を保っています

 葉が紅葉する理由については「紅葉はなぜ赤色なのか?もみじ狩りの由来と魅力を解説!」で説明しております。

イタヤカエデを見分けるのは難しい!?

 イタヤカエデの他に、樹形や葉形が似ている数多くの変種があります。

 以下に、イタヤカエデと似ている樹木を紹介します。

  • エンコウカエデ:葉は5角形で中裂。別名”アサヒカエデ”
  • オニイタヤ:葉は5~7裂し、裏面全体に短い毛がある。別名”ケイタヤ”
  • エゾイタヤ:枝が有毛で葉に細毛がある。別名”オオエゾイタヤ”
  • ウラジロイタヤ:葉は3~5中裂。裏面が粉白色をおびる。別名”コハイタヤ”
  • ベニイタヤ:枝が暗紅紫色で葉柄が紅い。別名”アカイタヤ”

 このように、葉の形が非常に似ており、区別するのは難しいです。

 イタヤカエデとは、これらの樹木の総称でもあり、区別されていない場合もあります。

 そのため、特に見分けが付かなくても、イタヤカエデとして紅葉は楽むことができるので、問題ありませんが、ここでは補足として、イタヤカエデと他の樹木とを見分ける方法を紹介します。

イタヤカエデ
  • 葉が5〜7裂
  • 無毛でギザギザの鋸歯がない
  • 黄色から橙色に紅葉

 上記の特徴を満たしている木は”イタヤカエデ”になります。

 イタヤカエデは、山地に自生していることが多いのですが、暖地や平地でも、自生しているイタヤカエデを見ることができます。

 また、カエデ科の中でも葉が分厚く、若い木の葉は切れ込みが深い傾向にあります。

日本産のメープルシロップの味とは!?

 イタヤカエデからはメープルシロップが採れます。

 一般的には、カナダの国旗にもなっている「サトウカエデ」から採れるメープルシロップが有名です。

 サトウカエデと比べやや糖分が少ないものの、メープルシロップを作ることは可能で、第二次世界大戦直後の砂糖不足の時には、北海道や東北で製造されていたそうです。

 現在でも、山形県金山町で「楓の雫」として販売されています。(金山町探訪ガイド

 「楓の雫」のメープルシロップの軽やかな香りと、さらりと流れる透き通るような甘さは、カナダ産とは全くの別物だそうです。

 メープルシロップの収穫時期は春先の3~5月頃で、夏に蓄えたデンプンが糖化し、根が活発に活動する春先になって、水分を吸い上げる際に、糖が水に溶けてシロップになるそうです。

 イタヤカエデは、日本のカエデ科の中では含糖量が最も多く、他のカエデの3倍近くあると言われています。

 主なカエデの種類については「トウカエデ(唐楓)の意外と知らない紅葉の名所と魅力を紹介!」で解説しております。

イタヤカエデの木材としての魅力を紹介!

 イタヤカエデの木材としての特徴は、赤味を帯びた白色~淡い赤褐色で、年輪ははっきりとしていないです。

 また、材質が硬く見た目も美しいので、建築や家具、楽器(バイオリン・ギター・ハーモニカなど)と幅広く用いられています。

 中には、美しい縮杢鳥眼杢が現れるものもあり、工芸材料として重宝されています。粘りがあり割れにくいので曲木に適しています。

 1970年頃の”ボウリングブーム“の時代には、ピン床板として多く使用されてたとされています。

 また、2008年に行われた”北海道洞爺湖サミット“では,G8会議の円卓テーブルイスが、檜山産のイタヤカエデで作られました。

最後に

 秋の美しい紅葉はもちろんのこと、メープルシロップ木材としても、意外と”イタヤカエデ”がみなさんの身近で利用されてると感じることができたのではないでしょうか。

 本記事を、秋の紅葉を観賞する際の参考にして頂けると幸いです。

 以上が「日本産のメープルシロップの木”イタヤカエデ”の紅葉の魅力とその味とは!?」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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