「雑木林」は”自然林”と”人工林”のどちらでしょうか。
雑木林と言えば、雑草が生い茂った”人の手が及んでいない”または”放置された”というイメージがあると思います。
そのため、雑木林は”自然林”と思うのが普通だと思われます。
しかし実は、雑木林は自然林ではありません。
雑木林は、古くから人里に近い自然林を伐採し、火で焼き払い、その後に育つクヌギやコナラなどの広葉樹を残して作った人工林です。
広葉樹については [まとめ] 押さえておきたい樹木の名前と種類の覚え方を紹介 (広葉樹編)で紹介しています。
本記事では、いわゆる雑木林とは何を指すのか、また近年需要が高まりつつある雑木林の歴史と今後について紹介します。
雑木林の定義とは?
広義としては、人里周辺の入りやすい林であり”里山”と等しく用いられます。
狭義は以下の通りです。
このように、雑木林は木材用途の主要樹木以外の林を指します。
雑木林から得られた木材は、薪にしたり木炭を焼くのに都合が良く、植えてから20年ほどで一度伐採されます。
伐採された後の切り株からは、再び芽が生えて、また林に育つのです。(萌芽更新)
雑木林に生えている樹種は、クヌギやコナラの他に、ミズナラ、カシワ、クリなどの広葉樹です。
様々な木々の間には、いろいろな灌木(かんぼく)や下草が入り込んで、まさに言葉の通りの雑木林です。
雑木林の歴史
以前では、人々は大切な雑木林を守るために、下刈りや枝打ちを行い、木の成長を助けてきました。
下刈りや枝打ちについては「林業とは -森林と共生する- 森林サイクルを紹介!」で説明しています。
しかし、石炭や石油、電気へと変わるエネルギー革命によって、今では薪や木炭はほとんど使われなくなっています。
その結果、現在では雑木林は手入れされることなく、ほとんど放置されるようになってしまいました。
さらには、住宅開発のために雑木林はどんどん切り開かれていきました。
この開発により、人々の暮らしを支え、子供達を楽しませた里山の雑木林やドングリは、現在では急速に姿を消しつつあります。
※雑木林のドングリについては、以下の記事で紹介しています。
木材利用としての針葉樹と広葉樹の違い
ご存知の通り、樹木には針葉樹と広葉樹があります。
針葉樹と広葉樹の構造の違いについては「松竹梅はなぜ ”縁起良く” ”めでたい” 樹木とされているのか!?」で紹介しています。
このように、針葉樹と広葉樹では利用先が異なります。
針葉樹は、軽く加工が容易で、縦にまっすぐな木材です。そのため柱や梁などの建築の構造材として用いられています。
一方で、広葉樹は重くて硬く強度があるため、キズが付きにくいという特徴があります。そのため、靴を履いたまま暮らす欧米では、広葉樹は床材に重宝されてきました。
しかし、広葉樹は太く曲がっていることが多いため、建築材としては利用されず、その美しい木目を活かした家具材として用いられています。
近年の雑木林の需要の高まり
現在、家具作りに適している国産の広葉樹材(ケヤキやミズナラなど)が不足しています。
ケヤキについては「ケヤキは木によってなぜ紅葉の色が違うのか。良いケヤキの見極め方を紹介!」で紹介しています。
また海外でも資源の枯渇が問題視されており、輸入広葉樹材が手に入りにくくなっています。
そのため、家具メーカーは材木の確保に苦労を強いられている状況です。
その結果、広葉樹はその希少性も手伝って、現在では針葉樹のスギ材の4倍〜5倍の値段がついています。
スギ材については「花粉のイメージ!? 日本にスギが多い歴史と対策」で紹介しています。
そのため、雑木林をもっと利用しようという気運が高まりつつあります。
日本の天然林や里山の雑木林には、今まで木材としてあまり利用されてこなかったコナラなどの広葉樹が残っています。
コナラについては「ドングリの木・コナラの紅葉と魅力を紹介!薪や炭の材として生活に欠かせなかった雑木林を代表する木」で紹介しています。
近年の技術革新により、乾燥の難しいコナラも美しい家具に利用することができるようになっています。
また、曲げ加工の新しい技法によって、適材適所での利用も考えられます。
今後、雑木林の需要が高まり、再び雑木林が脚光を浴びる時代が来るのかもしれません。
以上が「雑木林の定義とは?需要が高まっている雑木林の歴史と今後について」の説明になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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