日本の漆塗りの文化は世界的に有名です。
陶器が「チャイナ」と呼ばれるように、漆器は「ジャパン」と呼ばれ、世界に誇る日本文化として定着しています。
また漆は、ウルシの樹木を植林し、そこから得られる樹液を原料に用いた天然塗料であります。(以下の記事参照)
※以下、樹木は「ウルシ」とし、ウルシから採取された樹液は「漆」と表記しています。
しかしウルシは、本来は日本に自生していない樹木として知られていました。
本記事では、このウルシ(漆)の起源について紹介しております。
最後までお付き合い頂けると幸いです。
ウルシ(漆)の起源を紹介!
ウルシは東洋原産の樹木で、インドから東のタイやベトナム、台湾、中国、朝鮮および日本で栽培されています。
また、産地によってウルシの成分は異なります。
日本の方が、ベトナムで採取される漆よりも主成分である「ウルシオール」の割合は2倍程多いと言われています。
ベトナムと台湾のウルシは同じ成分で、台湾には元々ウルシは自生していませんでしたが、戦前に日本人の手でベトナム産ウルシが台湾へ移植されました。
日本と中国のウルシは同じ成分で、日本の漆工芸品は国産漆のみならず、中国産漆を利用した工芸品が数多くあります。
そのため年代は未詳ですが、古くは原産地の中央アジア方面から中国経て、ウルシは日本へ渡来したとされていました。
また書記で確認できるものとしては、701年「大宝律令」で桑の木と共にウルシを植えることが定めてられており、930年代「和名抄」には漆(宇流之)の記載があります。
さらに927年「延喜式」には諸国に産する漆を輸送することが定められています。
これらの書記から「この年代付近で中国から伝来したのでは!?」という説が有力でありました。
12600年前からウルシの利用が始まっていた!?
1984年に福井県・鳥浜貝塚遺跡からウルシの木片が出土しています。
ウルシの木片が出土した当初は、元々日本に自生した「ヤマウルシ」として報告されていました。
しかし、2011年に東北大学がこの木片の解析を行ったところ、12,600年前の「ウルシの枝」であることが判明し、ウルシは元々日本に自生していた可能性が考えられています。
また同遺跡からは、朱漆の櫛も出土しています。
これらの事実から、すでに縄文時代早期には日本にはウルシが自生しており、漆を生産し、朱漆の装飾品を作っていたと考えられます。
また、縄文時代早期(約9000年前)の北海道垣ノ島B遺跡からは、漆塗りの服飾品が出土しており、後期にかけても全国の遺跡から朱塗りの埴輪や木鉢など、漆塗り土器が発見されています。(上写真は函館市教育委員会の提供)
さらに、これら縄文時代の漆製品は中国より日本が古くかつ多く出土しています。
その後、定住生活が進む弥生時代にかけて、農耕具や漁具など漆の用途は多様化していきました。
この結果、少なくとも9000年前からは漆が生産されており、古来よりその技術が伝承されてきたと考えられます。
最後に – 漆の歴史
このようにウルシは古来より日本に自生しており、漆文化は日本の発祥であるという説が有力であります。
次回は「飛鳥時代(592〜710年)から始まる漆の歴史」について紹介いたします。
以上が「ウルシ(漆)の起源を紹介!12600年前から利用が始まっていた!?」の紹介になります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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※本記事は「有用草木博物辞典」を参考にさせて頂いております。