”ヤナギ(柳)”は他の木と比べ、その独特な立ち姿が目を引き、ゆったりとした風情を漂わせている樹木です。

 晩秋に近づくにつれ、枝が下に向かって垂れ下がる”シダレヤナギ”が黄褐色に紅葉します。

 このように、生命の活動が停止する冬が日に日に近づくなんとも言えない物寂しい趣きで、秋の終わりを告げています。

 そして静かな冬が終わり、風はまだ冷たくとも、日は徐々に長くなっていきます。

 残雪が残る2月になると、”ヤナギ”は一足先に春の訪れを知らせます

 その中でも”ネコヤナギ”は、銀白色の花穂が綿毛を広げ、春を先取りしています。

 中国では、”ヤナギ”は「春を告げる木春の復活」「蘇生のシンボル」とされる”吉祥木”です。

 そのため正月には、門や軒に挿す風習があります。

 またシダレヤナギを、旅立つ友に”輪っか”にして渡し「再開を願った」とされています。

 そして季節が移り変わり、夏を迎えると、ヤナギはその涼しげで穏やかな風情で人々を魅了しています。

[まとめ] 日本の四季を告げる”ヤナギ(柳)”の特徴と種類を一挙紹介!

 ヤナギの種類は数多く、日本では街路樹としては「シダレヤナギ」が有名ですが、春の訪れを知らせる「ネコヤナギ」や、生け花としては幹が曲線を描き美しい「ウンリュウヤナギ」もとても魅力的です。

 今回は、季節の移り変わりを知らせる ”ヤナギ” の特徴魅力の一覧を紹介します。(後半に主なヤナギの種類を紹介しております)

シダレヤナギ(ヤナギ属)-最も有名なヤナギ-

 シダレヤナギは、雌雄異株落葉樹です。

 中国から万葉集以前に雄株だけが日本に渡来したため、実を結びません

 日本ではそれ以来、挿し木のみで増やしている木です。

 (雌雄異株については ”植物に「性別」はあるのか!?そのメリットを解説!” で詳しく紹介してます)

 シダレヤナギは、庭木水辺沿いに植栽される、最も有名な木です。

 小枝は細長く垂れ、趣のある風情を醸し出しています。

 シダレヤナギで有名なのは「銀座のヤナギ」ですが、都心での育成は中々難しいとされています。

 また、昔から川や井戸の側に植えられることが多かったため、夜風に揺れる様子が幽霊を連想させました

 アイヌの伝説では「川に落ちたヤナギの葉を神がししゃもにした」という話があるそうです。

 ししゃもは漢字で「柳葉魚」と書く理由も、この逸話に由来しているそうです。

 ヤナギは春になると綿毛のような実をつけるのはご存知でしょうか。

 風に舞う様子はまるで雪のようです。

セイヨウハコヤナギ(ヤナギ科)-真っ直ぐに伸びるヤナギ-

「セイヨウヤナギ」と言ってもピンと来ないかもしれません。「イタリアポプラ」と呼ばれる最もよく目にするポプラのことです。

 まっすぐ天を貫くように伸びる樹形が特徴で、シダレヤナギとは対照的です。

 秋にはそのまま黄色く変身したような見事な黄色い紅葉を見せてくれます。

 広いところに植えられることが多いので、晩秋の風に乗って、高い梢から黄色い紅葉が舞い散る様は、とても風情があります。

 西洋から渡来した「ハコヤナギ」が名前の由来で、ハコヤナギは材から箱を作ったことにより、この名前がつけられたと言います。

ユキヤナギ(バラ科)-春も秋も素晴らしいヤナギ-

 ユキヤナギは、ヤナギ科やヤナギ属ではなくバラ科ですが、”ヤナギ” が名前につく落葉樹です。

 春先にヤナギのように垂れ下がる小枝に白い花が覆われ、咲き乱れる様を雪に見立てて「ユキヤナギ」という名前がつけられました。

 秋の紅葉も素晴らしく、黄色や橙色、赤色に色づき、葉と葉の間に適度な間隔もあり、実に繊細な美しさを見せてくれます。

 黄色に色付くことが最も多く、基本的な紅葉になりますが、比較的暖かい地域でも鮮やかな色に染まることも魅力の一つです。

バッコヤナギ(ヤナギ属)-材として用いられるヤナギ-

 別名「ヤマネコヤナギ」とも言い、「ネコヤナギ」から似ていることからこの名前がつきました。

 日本のヤナギ属の種類は多々ありますが、材としては全て”ヤナギ”として流通しています。その中でバッコヤナギが多くを占めています

 材は白っぽく、軽くて柔らかいのか特徴で、イチョウと共に、まな板の材として人気があります。

 イチョウについては ”なぜ街路樹には銀杏の木が多い?秋を彩る紅葉「イチョウ」の特徴と魅力を解説!” で詳しく紹介しています。

ヤナギの主な種類一覧表

 ヤナギだけでも以下、数多くの種類があります。

 それぞれの「ヤナギ」をクリックすると、”Wikipedia”などの各紹介ページに移ります。

 気になる樹種があればクリックしてみて下さい。

最後に -柳の魅了とは-

 最後に「新古今和歌集」西行法師の和歌を紹介します。

 道のみに清水ながるる柳かげ しばしとてこそ立留まりけれ(西行法師)
 道のほとりに清水が流れている柳の木陰よ。ほんの少しと思い立ち止まっただけなのに、その寂しさについ長居をしてしまったことだ。

 シダレヤナギは、その細く長い枝葉が垂れ下がり、風に揺られ、水と映りあう風情は、他の木には無い物寂しげな雰囲気を漂わせています。

 日本の四季の移り変わりを知らせ、穏やかな表情で親しみを与えてくれるヤナギ。

 近くにヤナギの木がある方は、一度じっくりと観賞してみてはいかがでしょうか。

 以上が「[まとめ] 日本の四季を告げる”ヤナギ(柳)”の特徴と種類を一挙紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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