近年「木造ビル」が注目されています。
イメージとして「木造」と聞くと、
・低層 = 平屋
・2階建などの個人住宅
を想像される方も多いのではないでしょうか。
また、ニュースでは「木造密集地域」といった、少しネガティブな表現が使われることもあります。
一方、海外では「10階建てのビル・マンション」が、”木造”で建築されています。
日本でも昔は、建築物は”ほとんど木”で出来ていました。
歴史ある学校も、木造のものが多いですよね。
このように森林国である日本で、木造の建築物が建てられることは、本来とても自然なことのはずです。
しかしながら、いま木造のビルが作られることが、なぜ注目されるのでしょうか。
本記事では、”日本の木造建築”と、その歴史的な”経緯”を紹介していきます。
戦後に形作られた”木造建築”のマイナスイメージ!
日本の森林が、本格的に産業利用されたのは明治維新が最初です。
建築、鉄道、金属などのあらゆる近代産業を支えるために、日本の森林は伐られていきました。
そして20世紀に入り、森林の荒廃が問題となり、植樹・造林が推進されていきます。
しかしながら、そのあたりから日本は第二次世界大戦に突入し、軍事物資の供給のため、再度日本の森林は伐採されていきました。
この戦争による荒廃と相まって、戦後の日本では森林の保護を目的として、さらなる木材の大量利用の抑制がなされていきます。
さらに、それに拍車をかけるように、1959年の伊勢湾台風で多くの木造住宅が、”火災”と”浸水”の被害を受けたことをきっかけに、「建築防災に関する決議」が提起されました。
これにより、災害発生の可能性がある地域に対してのみ、火災・風水害の防止を目的とした「木造禁止」が求められていきました。
しかしながら、地域を限定とした情報はそぎ落とされていき、「木造禁止」という言葉だけが独り歩きしていったようです。
こうして、木材の”利用制限”と、”災害防止”のための限定的なイメージの「木造禁止」が広まり、日本での木造建築は逆境に立たされていくのでした。
木材の耐火性能の進歩!
現代では、木材の利用は推進され始めています。
ここで残る課題は「木造=燃える」という、ネガティブなイメージの払拭です。
そもそもとして、実際に木はそう簡単には燃えません。(以下の記事参照)
「表面が燃え始めても、強度を失うことなく、芯まではなかなか燃えない」というのが、火災に対する木造の強みなのです。
キャンプでも、薪火を起こすのは難しいですよね。
現在、中高層用ビル用に「マスティンバー」と呼ばれる、集成材を製造しようと試みがなされています。
この集成材の表面は、耐火のための「燃えしろ」層です。
また日本では、2時間耐火する建築材が認可されたため、14階建てまででの建造物であれば木造で建築が可能となりました。
しかしながら、これは14階以下の建築物しか建築できないことを意味します。
15階以上の建築のためには3時間耐火の材が必要です。
そのため製材業界では、木材そのものの耐火性を上げ、
・不燃材を集成材の中に層として取り込む
・金属を被覆した木質集成材を創る
などの各社の得意とする方法で、3時間耐火材の開発に取り組んでいます。
最後に – 木造高層化の未来とは!?
「木の使用量が増え」「国内での製材・原木の需要量が増加し」「森林が管理される」理想的なサイクルが望まれています。
また、”二酸化炭素の固定”という観点からも、木を燃やさずに使える構造材としての使用は好ましいです。(以下の記事参照)
しかしながら、木造ビルに対して、否定的な意見も挙げられています。
たとえば、日本古来の木造建築は、その「緩さ」が一つの特徴であり、部分的に材の入れ替えなどが可能な建築が多いです。
しかし、集成材を金具で接合したビル建築にそのような「緩さ」は存在するのでしょうか?
また「マスティンバー」には、防腐剤などが注入され、表面にはラミネート加工される材もあります。
「木を使うこと」が推奨されている現在、私たちにとって本来の「木」とは、どのような存在であったのでしょうか。
本記事が、木材について改めて考えるキッカケになりますと幸いです。
以上が「木造ビルのオフィス街が現実に!?~技術と五感が新たな社会を創る~」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。
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